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第89話 初デート 10
観覧車を降りたところで、颯が手を差し出してくれたので、そのまま、手を繋いで歩き出す。
オレの右手と、颯の左手を繋いでいるから、颯がつけてる指輪が触れる。
……もうほんとに、嬉しい。
その後、連れて行ってくれた、レストランもすごく素敵な感じ。入口から広くて特別な感じのするお店。
案内された席のすぐ近く、大きな窓からの眺めはすごく良くて、街並みが一望できた。月が青白く見えて、とても綺麗で、見惚れる。
落ち着いた雰囲気で、隣のテーブルとは距離があって、二人きりみたい。静かな音楽も流れていて、ムードあるし。
お酒もおいしいし、料理も、おしゃれで美味しくて、文句なし。
なんか颯って、すごいなあ……。こういうとこも、慣れてる感じもすごい。
比べると、オレのデートって、楽しく遊びましょう的な感じだったなぁ……とちょっと振り返って、あれれ?と思わなくもないけど。ま、まあ、高校生だったし。うん。あれはあれで可愛いデートだったはず……。
ちょっと心の中で変な言い訳をしながら、運ばれてきた料理を食べ始めた。
「――――……」
向かいに居る颯の、左手が目に入る。
自分の左手も。
お揃いの指輪。
なんかもう、嬉しすぎて、ほんとに、どうしようって思ってしまう。
「なー、颯、指輪って、いつ頼んでくれたの?」
「番になってすぐ」
「サイズはどうしてぴったり?」
「オレより細いかなって思って。大体で。合わなかったら、一緒にサイズ直し行けばいいかなと思ってたけど。ぴったりだったな?」
「うん、ぴったり」
ひゃー。なんか、ほんと、颯ってすごい。
今まで何回もそれで指輪作ってあげてるとか……??
「石と刻印が時間かかったんだけど……思ってたより綺麗に入ってたから」
「うん、すごく綺麗。ありがと」
また指輪を見ながら、ふふ、と笑ってしまうと、颯も笑う。
「指輪が初めてだから新鮮。なんかまだ全然慣れない。慧は?」
「ん?」
「? 何?」
「指輪初めてなの?」
「指輪は買ったことも無いけど?」
……あ、買ったことないんだ。なんか良かった。
と喜びつつ。
「初めて買うのにサイズぴったりなの?」
「たまたまだけど」
聞いたオレに、颯が苦笑する。
「……ほんと、ありがと」
「ん」
くす、と笑う颯。
「何かお礼したいな……」
そう言うと、颯は、ふ、と笑いながら、首を振った。
「つけてくれるだけで嬉しいからいいよ」
「でも……」
「いつか何か思い浮かんだら、お礼して?」
「んー。……分かった」
なんかいつも颯にしてもらってばかりな気が。
……むー。何かしてあげたいけど、何か今は思いつかない。
「慧、学校にはつけてく?」
「え? うん。つけてくよ?」
即答すると、颯はオレをまっすぐ見つめる。
「……あ、だめ? つけてっちゃ」
「いや。ダメじゃないよ? 目立つと思うけど良いのかなって」
「……ていうか、つけていきたいけど」
そう言ったら、颯はじっとオレを見つめた後、何だかとっても穏やかに微笑んだ。
「ありがとな、慧」
「ん? ……ていうか、ありがとは、オレのセリフ……」
「多分月曜から、周り騒ぐだろうな」
「んー……うん。そだね」
想像すると、ふふ、と笑ってしまう。
「颯と仲良しだって分かってくれると思うよね?」
「――――……」
にっこり笑って言ったら、颯は一瞬黙って、オレを見つめた。
「ん? 何?」
「仲良し、って」
「え?」
「仲良しって、思ってるんだなと」
優しく微笑む颯の言葉に、え、と固まった後。
うわわ。とまた赤くなる、迂闊に言っちゃうアホなオレ。
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