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第90話 指輪おひろめ

◇ ◇ ◇ ◇  颯との初デートは、めちゃくちゃ楽しくて、感動して、色々赤面しつつも、最高な感じで終わった。マンションに帰っても優しい颯と、ベッドになだれ込んで、多分相当ながいことイチャイチャしてて、日曜は目覚めたのも遅くて、何だかすごくのんびり過ごした。  で、月曜。  指輪を付けて学校に来たら。  皆って、めざといんだなぁ。  別にオレ、見せびらかせようとして、左手を振ったりしてる訳でもなく、見やすいように動かしてる訳でもないのに。  ほんと皆、すぐ気づいてくれて、オレが何も言うこともなく、大騒ぎ。 「いつからつけてんの?」  土曜日。 「お揃いなの?」   ……って当たり前じゃん、結婚指輪だし!! 「ほんとに結婚してるの?」  そこからかよっ! もう!  なんか色々聞かれるのだけど、多いのはこの三つ。答えるのも疲れてきた。  ていうか、後ろ二つ、いーかげんにしてほしい。むむ。  朝から大騒ぎで、すれ違いざまにも気が付く目ざとい友達たちにも色々聞かれながら、昼。学食で、いつもの三人と、食事を買ってから、テーブルにつく。 「……思ってたよりも、皆、気付くんだなーってびっくりした」  そう言ったオレに、皆苦笑い。 「慧、アクセサリー、あんまつけないじゃん。指輪とかいつもつけてる奴なら、目立たなかったかもしんないけど」  と誠が言うと、健人が苦笑い。 「でも、やっぱり左手薬指っていうのは、目立つだろ」 「だな。一瞬でそこに目が行く」  昴もそう言って、オレの左手に視線を向けた。 「いよいよ、あれか? オレのもん、って感じ出してきたのかな?」  健人が笑いながら言う。 「ん? 何いよいよって?」 「昔はあいつ、涼しい顔してたけど……慧に関しては違うんだろうなーと思ってるんだよな」 「そっかぁ。健人は颯と同じクラスになってたもんね。……颯、そんな感じだった?」 「ていうか、分かるだろ? 涼しい顔してる感じ」 「……ん、分かる、かも」  確かにそんな感じ。クールだし。熱くなってんのはオレばっかだったような。女の子に対してもそんな感じ、してた。 「でも、慧に関してはさ。こないだの感じ見てても、オレのって感じ、醸し出して来てるよな?」 「……そう?」  なんか、それは大分嬉しいような……。  でもなんか皆の前で嬉しいとかはちょっと言えない。  ちょっと俯いた瞬間、目に入ってくる、指輪。  ……なんか、ふわ、と気持ちが上がる。  今日一日、そんな感じ。  目に留まる度、話題に上がる度。ずっと、嬉しかった。  誠が指輪を見ながら、笑顔。 「すっげー綺麗な作りのリングだよな?」 「うん。だよね」 「センスあるな、颯」  思わずうんうん、と頷いてると、誠は笑いながら。 「なんか、彫ってあんの? 裏側」 「……あるけど、秘密」  なんとなく、そこは秘密にしておこうと思って、とっさにそう言った。  言うなら颯がいいって言ってからじゃないとやだなーと思ったんだけど、質問した誠が苦笑い。 「ふわー、なんか慧が可愛くなってる」 「なってないし。何がだよ??」 「颯が彫ったの、むやみに見せたくないんだろ? 乙女みたい。可愛い」 「何がだよっもう 離せってば」  よーしよしよし、と撫でられ、ぴっぴっと、その手を払う。 「乙女とか、やめろ」  ぷんぷんしながら言うと、三人とも苦笑しながら、オレを見る。  ブルーダイヤの意味とか。……言うの恥ずかしいしな。  ……めちゃくちゃ嬉しいから、話しながらニヤけそうだし。  もうちょっと、気もちが落ち着いてから、颯にも聞いて、良かったらいつか話そう。  ……もうしばらくは、なんか。  大事にオレだけの中に、あってほしい。とか。  ……あれ? ちょっと乙女感ある? とちょっと首を傾げつつも。  でもなんか、大事にしてたい。

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