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第91話 仲間との飲み会 1
「そういえば、飲みに行こうって言ったろ、こないだ」
「ん?」
昴の言葉に、首を傾げる。
「約束してたっけ?」
そう言ったら、誠が、ああ、あれか、と笑った。
「ほら、こないだ、健人が颯に飲みに行こうって誘ったら、颯がオレと昴にも、なんでも聞けって言ったやつ」
「あ、そっか。……それ、ほんとに行きたい?」
そう聞くと、皆、ん、と頷くので。
「颯に、聞いてみるね」
そう言ったところで、他の友達たちもやってきて、今日初で会う仲間からは、すぐに指輪へのツッコミ。
ほんと皆、良く気付く。
なんだかんだで、颯とお揃いで指輪を付けたってことは、ほんとに結婚して、まあまあ仲良くやってるんだな、てことがやっと周りにも知れたみたいで。
ほんとに良かったなあ、と思ったりした。
◇ ◇ ◇ ◇
健人、昴、誠と、颯とオレとの五人で、飲むことになったのは。
その話から、ほんの四日後の金曜日。
颯に聞いたら、いいよって即答で。
……ほんとにいっぱい聞かれるかもよ、て言っても、全然いいって言うから。
それで、今に至るのだけど。
少しゼミが長引きそうだから先に行っててと、颯に言われたので、颯以外の四人で予約した店に入った。後から颯がオレの隣に来るだろうってことで、オレの隣は空けて、向いに健人、誠、昴、と並んでいる。
オレの目の前の昴が、なんか、絶対何か言いそうな顔してる。
誠が言った、そういう意味でオレのことを好きな訳はないけど、一番オレと近いのは昴だから。心配してるのも、多分昴が一番。それは分かってる。
「颯、どん位で来るんだろ。飲むのも待ってる?」
「ううん。先に飲んでてって言ってた」
健人の言葉にオレがそう言うと、じゃあ来たら乾杯し直すか、と健人が言って、まず一杯目を注文した。
「まあとりあえず、乾杯、だよな。結婚おめでとう」
健人が言ってくれて、皆で乾杯。
「なんだかんだで、慧もバタバタしてたし、なんか俺らも驚いてばっかだったし、お祝いもできてなかったもんな」
「そうそう、半信半疑だったし。ごめんな。今度ちゃんと祝うからね」
「まだ半信半疑な部分はあるけどな」
健人の言葉に、誠が同意した後、昴がそんなことを言う。
すばるー……と、困って言うと、「今日大丈夫になるといいけど?」と昴が笑う。誠と健人も苦笑を浮かべてる。
「あの……颯が来る前に言っとくね」
オレが、意を決して、三人を見る。
何々?と皆がオレを見つめてくる。
「……オレは、颯とこうなれたから、Ωになったのも、良かったと思ってる、から」
そう言ったら、三人、お、と目を大きくして。それから三人で顔を見合わせてる。
「……確かに、昔はあんなやりとりばっかりしてたから、皆が心配なのも分かるけど……でも、変性した時にはもう、そんな感じだった。颯と話したのも久しぶりだったし……ていうか、喧嘩腰じゃなくてちゃんと話したのも、初めてだったかもだけど……」
黙って聞いてくれてる三人をじっと見つめる。
「……オレ、ちゃんと颯のことが好きだから、さ……」
……言った瞬間。
ぽぽぽ、とまた顔に熱が上がってくる。
「ぅわ、ハズすぎる……だ、だからさ、オレこれ、まだ颯にも言えてないからね、それ言ったんだから、分かって」
ひー恥ずいー、と頬を押さえていると。
三人皆、え? という顔。
「好きって言ってないの? まだ?」
一番にいったのが誠。
「こないだもそんな事言ってたけど、まだ言えてなかったのかよ?」
もーほんとに、慧、と笑われる。
「しかも何でそれ、ここで先に言うの」
ケタケタ笑われて、ぐ、と言葉に詰まりつつ。
「だって、なんか、颯に色々聞こうと思ってるんでしょ? ……とりあえずオレの気持ちは皆に言っとこうと思って……オレは納得してるし、良かったからねって……」
はー。顔アツ……とすりすり頬を撫でていると。
「あ、颯来た」
「ひゃあ!!!」
「嘘だよ」
「……っはー? もー!」
昴が言った言葉に、心臓がびっくりしすぎて、悲鳴が漏れたのに。
ひどい―!! と怒ってると。
「ていうか、そんなの本人に言った方が良いんじゃねえの? なんでそんな、来たって言ったくらいでひゃあとか……聞かれたくねえの?」
昴がめちゃくちゃ笑ってるし。
「好きも言えないのに結婚してるとか……」
「……言うし、ちゃんと。その内」
「その内って」
三人ハモって、笑われた瞬間。
「悪い、待たせた」
涼し気な。颯の、カッコいい声が、不意に後ろから。
「ひ」
またしても叫びそうになった、とっさに、手で自分の口を塞いだ。
「……慧?」
オレを見下ろして、不思議そうに笑ってる颯に、ぷるぷる首を振る。
「は……早かったね。あっ、何、飲む??」
辛うじて叫ばずに済んで、オレは、隣に座った颯にメニューを差し出した。
三人、笑ってるけど……無視無視。
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