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第92話 仲間との飲み会 2

 颯が飲み物を頼み終えた時、颯の目の前の健人が、お疲れ、と笑った。  ん、と頷いて、颯は「悪い、遅くなって」と、誠と昴を見る。 「もう前から……結構高校の頃から、慧につられて颯って呼んでるんだけど、それで良い?」 「オレもそう。颯って呼んでる」  誠と昴が颯に向かってそう言う。 「もちろん。誠と昴、だろ? よろしく」  二人に言って、にっこり笑う颯。誠は笑顔で。昴は、じっと颯を見つめながら、頷いてる。  ……昴さん。スマイルスマイル。  心の中で言ってしまう。  颯対オレ、でめちゃくちゃ張り合ってた頃、昴にはいっぱい色々話してたから、もしかしたら、颯対オレ(&昴)の気分だったのかもな、無意識に一緒にバトルしてくれてたのかもと、なんとなく思う。 「あ。食べ物、適当に頼んで、まだそんなに来てないけど。颯、何か頼む?」  オレが颯に聞くと、「結構頼んだ?」と聞き返される。「うん、適当に」と答えたら、とりあえずそれでいいやと、笑う颯。    ……カッコいいなぁ。颯。  ぽけ、と見つめていたら、飲み物が運ばれてきた。 「じゃあもう一回改めて、な。結婚おめでと」  健人が言ってくれて、皆でグラスを合わせる。少し飲んでから、颯がオレを見つめる。 「慧、まだ一杯目?」 「うん。颯、早かったし」 「そっか。まだ酔ってはない?」  クスクス笑われて、うん、と頷く。そんなやり取りを見ていた誠が、はは、と笑い出した。 「オレらさ、よくよく考えると。喧嘩してないお前ら見るのが、まずレアなんだってことに、気付いた」  誠がそう言って笑ってる。 「別に喧嘩してた訳じゃ……ないよな?」  颯が苦笑いで、誠に言ってから、オレを見つめて、笑う。 「うん。すこーし、張り合ってただけだよね?」 「少しじゃねーし」  あ、また三人ハモった。  思わず笑ってしまうと、颯も横で笑ってる。  料理が次々運ばれて来て、あれこれ取って食べながら、誠が、指輪の話を始めた。 「結婚指輪のこと、颯の周りもすごかったの?」 「すごいって?」 「慧はからかわれてすごかったぞ。な?」 「からかわれてたの、あれ」  むむ、と思うと、健人が、すごかったよな、と笑う。 「ほんとに結婚してたのか、とか、それおそろいなの? とか、すげー聞かれてたよな。皆笑ってたけど」  誠がそう言って、はは、と笑う。 「会う奴皆に言われてたよな。結婚してたんだなって」  昴もそんな風に言ってくる。  むむむ、と思っていると、颯はオレを見て、そうなのか?と笑う。 「慧が、反応がすごかったとは言ってたけど、詳しくは言ってなかったから。つーか、別に、結婚が冗談だと思ってる訳じゃないだろ?」  颯が聞いてくるけど。 「あいつらの誰かは本気で冗談だと思ってるかも」  むむむむむ、と不満げに言うと、誠が「さすがにもう結婚自体が冗談とは思ってないと思うけど」と笑った。 「んで? 颯の周りは?」 「オレの周りは……まあ、指輪を付けたことがないから、それは言われたけど。……結婚指輪? て聞かれて、それ以外ないだろ、って答えたら、大体それで終わった」 「えー、なにそれー何でそんな違うのー???」  オレがブーブー言ったら、健人が首を振った。 「違うって。颯の前ではそれで終わって、その後、別のところで、騒いでたし」 「何だ、それ?」  颯が不思議そう。オレもその隣で、別のところ?と首を傾げる。 「全然知らねえの?」  健人の言葉に、ああ、と颯。 「結婚したって信じたくなかった奴らとかさ。慧と颯は仲悪かったし別れるんじゃないかって密かに願ってる奴らが、大騒ぎしてた。颯が、本気なのかもって」 「ん? ――……結婚した時点で、本気だと思うんだけど?」  何だそれ? と、颯は不思議そうだけど。  オレは健人の言葉に、なんとなく、納得。  分かる気がする。 「颯と慧が一緒に居るとこを、大学で全然見ないのもいけないんだろうな」  健人が苦笑いでそう言う。 「特に高校一緒の奴らは、仲悪いとこしか見てねーから」 「……悪くないし」  むむ、と膨らんだオレを、颯が隣から覗き込んで、ふ、と笑う。優しい笑みに、どき、として、じっと見つめてしまう。 「ほら。そういうやりとり、誰も見てないしな?」 「つか、オレは目の前の光景が、意味わかんねーけど。幻か?」  誠の笑いながらのセリフに続いて、昴も肘をついた形で、オレ達を眺めながらそんな事を言う。  そんなやりとりって。  ……ちょっと、うっかり見つめちゃっただけじゃん。  くー。颯が、優しい顔するから……。  

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