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第93話 仲間との飲み会 3
「なあ、それさ。いっこ、気になってんだけど、オレ」
昴がちょっと不満そうな顔で、颯を見つめた。
「慧と番う前に付き合ってた女、居るだろ」
「……番う前には別れてたけど、最後の元カノのことか?」
「そう。藤嶋美樹だっけ」
「美樹が、何?」
「まだあきらめてないって噂だけど」
あ。そういえば、Ωの三人と飲みに行った時言ってたな。
昴も知ってるんだ。……ていうか、有名なの??
「諦めてないもなにも、番になって結婚までしてるし、オレ」
颯がそう言うと、「別にαは複数のΩといけるだろ」と昴。
颯は、ふー、と息をついて、オレを見る。
「オレ、もう慧以外、いかない」
めちゃくちゃはっきり言ってくれて、オレを見つめる颯に、内心とっても嬉しい。
「オレが番うのは慧だけだって、約束してるし。な?」
「ん」
……内心どころか、めちゃくちゃニコニコしてしまう、オレの顔。
「はいはい、そこ、緩んでる場合じゃないでしょ」
誠が可笑しそうに笑いながら、オレに突っ込んでくる。
……べ、べつに、そこまで緩んでないし! ちょっとニコニコしちゃってた自覚はあるけど……。と心の中で言い訳してるオレをそっちのけで、健人が、んー、と考えながら。
「でも美樹、気は強いけど、変なことするような奴じゃないと思うけど」
健人がそう言うので気を取り直して、あれ、健人も知ってる人なの?と聞くと。
「高校一緒だったけど。知らない?」
「え。そうなの?? ……知らないかも」
「そっか。まあ関わんない奴、ほんと関わんないもんな。でも颯の側にずっと居たと思うけどね、付き合う前も。慧、見たことないのかな?」
「……大学で腕組んでる時に見たことはあるけど。高校ん時は、覚えてないや……」
「オレも知らない」
オレがうーんと考えてると、昴も続けてそう言った。そっか、と健人は頷いて。
「美樹は颯のことがずっと好きだったの、有名だったからな。だからそんな噂が出ちまってんのかも」
健人の言葉に、ああ、なるほど……とオレが頷く。
「……オレが、別れる時に泣かれたのは、美樹だけかも」
「え、そうなの?」
颯の言葉に、びっくりで聞き返したオレを、皆が見つめてくる。
「なんでそんなそこに驚いてんの?」
「え、だって。……皆、泣くんじゃないのかなって……」
誠の言葉に、びっくりの理由を言ったら、颯は、苦笑で。
三人は、はー、と息をついてから、顔を見合わせて、ははっ、と笑いだす。
「何だよー???」
む、と聞くと。
「慧、もし颯と別れるってなったら、大泣きするってよ」
「別れないであげてね?」
「番になっといて別れたら、慧が泣く前にぶん殴るけど」
健人と誠と昴が笑いながらそんなことを言う。
昴はちょっと過激だけど。いやいや、それじゃなくて。
「オレ、泣くなんて言ってないじゃん!」
反論したけど。
「颯と別れて泣かない子がいるのが不思議なんだろ?」
「美樹だけだって聞いて、びっくりしたんだよな~?」
「結果的に、別れたら泣くって言ってることだって気づかないのがすごい」
昴と健人と誠に続けて言われて、ぐ、と黙ると。
「大丈夫、オレ、お前泣かせないから」
クスクス笑いながら、颯がオレの背中をポンポンしてくれる。
照れまくって、「ん」と頷いてると、三人が呆れたように、でもなんか、面白そうに笑う。
ちょっとお前らもう、今、何も言うなー。
と、心の中で言って、むむ、と眉を顰めると、余計笑い出す。
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