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第94話 仲間との飲み会 4
「美樹とはちゃんと別れたし、今も普通には話してるけどそんなそぶりはないから大丈夫だと思うけど……」
「ヒートとかでなんかしかけられたら?」
昴が聞くと、颯は、ああ、と昴を見つめ返した。
「ヒートで迫られても、かなり耐性あるから平気」
「耐性……?」
オレが思わず口をはさむと。
「まあ、色々あるから、そんなほいほい乗る訳にはいかないだろ。鍛えられるんだよ、うちの家系」
「ど、どうやって?」
「あー……まあ、内緒。……抑制剤無くても、平気かもってくらい」
「……颯ん家、怖いね」
思わず言うと、「今までそれだけ色々あったってこと」と颯が苦笑い。
「慧のことは泣かせないから、大丈夫」
颯の言葉に、皆もオレも、ただ頷く。
「……なあ、颯」
「ん?」
昴のちょっと喧嘩腰な言い方に、颯は何だか面白そうに口角だけあげて、少し笑って見せた。
「昴が一番オレに、言いたいことありそう。何?」
「――――……お前、何で慧が好きなの。納得いかない」
「……どういうこと?」
「オレ、ずっとこいつと一緒に居たけどさ。ウザくなかった? ことあるごとに突っかかってさ」
な。……な。……なんてこと言うんだー!
というオレの顔に気づいた昴は苦笑いで、オレを見てから。
「オレは面白かったけど」
と言って、「颯は、面倒じゃなかった?」と続ける。
「あんな風にずっとしててさ、大学は絡まずにいて、んで急に運命だから番になったって言われても、オレ的には、は? て感じで」
「ああ……」
「慧の気持ちより、颯の気持ちが分からない」
「……慧の気持ちは分かんの?」
颯の言葉に、昴は、ちらっとオレを見てから。
「慧はたぶん、昔からお前のこと意識してたし、追っかけてたし。憧れっぽいのもあったのかなって思うから、それが変性して、運命とかもあってってなると、まだ気持ちは分からなくはない」
「――――……」
家族だけじゃなくて、昴にもそう思われてたのか……。
……ていうか、他の友達とかも、もしかして、オレが、颯に吠えてる時、もしや、ああ、好きなんだな、だから吠え掛かってるんだな、みたいに思われてたってことー?? わーん、超ハズイー。
でも、学校でツートップって言われてたし、別にそんな風なこと、言われたこと、多分一回もないし、昴だって、こんなの言うの初めてだし。
……言われてないよね? オレ。
言われてて、オレがあれをしてたなら、大分恥ずかしいぞ……。
自分の嫌な考えを否定しては、またむくむく考えて、ちーん、とテーブルを見つめていたら。
「オレ、慧に好かれてるとは思ったことなかったよ。ライバル視されてるし、オレに勝ちたいんだろうなーとは思ってたけど」
颯をちら、と見上げると、気付いた颯がオレを見て、目線が合うと、ふ、と笑ってくれた。
「ことあるごとに、ライバルっぽい位置に上がってきてさ。球技大会とか体育祭とか、文化祭とかも色々……成績もか。小テストとかも言いにきたことあったよな?」
「……あったかも」
「でも、オレに対して、そんな風にしてくるのって、慧くらいだったし。ウザいと思ったことは、なかった」
「……何で? アレって、相当、ウザいだろ」
「……つか昴はオレをウザいと思ってたのか」
ぼそ、と言うと、皆がクスクス笑った。
「ちげーわ。オレは面白かったし、応援もしてたろ。……颯の立場からしたら、めんどくせーんじゃねえのってこと。いちいちつっかかて来られるとかさ」
「…………」
やっぱりそう?? と思って、颯を見上げると。
「だから言ってるだろ。つっかかってくるのは慧くらいでさ。なんか面白くて、たまにオレが負けても、慧が嬉しそうなの、なんか可愛く思えてたし」
「――――……」
ぽぽ。
……現金なオレは、すぐ、気分が上向いて、顔が火照る。
「大学で絡んでこなくなって、寂しく思ってた位だし」
颯の言葉に、しばらく無言の昴。
「……じゃあ、お前、本当に慧のことが好きなんだな?」
「フェロモン飛ばしてた慧、誰にも任せたくないから、連れて帰った。嫌だったら、置いていくこともできた。……連れて帰ったら、運命だって思って、実際そうだった。もともと好きじゃなきゃ、番にもならないし、結婚なんかしない」
まっすぐ逸らさずに昴を見たまま、颯が言い切ると。
数秒黙ってから、昴は、ふー、と息をついた。
「分かった。――――……ん。」
昴が差し出した右手に、颯も手を出してる。なんで握手? と思ったら。
昴の奴。
「……世話、任せた」
とか、言いやがった。
「はー?? 世話なんかされてないしー!!」
とオレが言うと、握手したまま、二人がオレを見て、苦笑い。
「任された」
颯までそんな風に言って、笑う。
誠と健人は、ははっと笑いながら、オレに、まあまあ、とか言ってるし。
意味分からない。もう。
でも、むかむかしてるオレをそっちのけで、昴はなんだか吹っ切れたみたいな。
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