95 / 207

第95話 仲間との飲み会 5

「αん時から変に危なっかしかったから」 「……あぁ、なんか分かる」 「一応色々守ってたんで」  昴の意味の分かんない言葉に、なぜか颯は、ああ、と笑って、ありがとな、とか言ってる。 「……オレ なんか守られてた??」 「いーよお前は、知らなくて」 「そうだな」  昴と颯に言われて、納得いかないオレを一人残して、なんか皆は、そうだね、うんうん、みたいなノリ。どういうこと。何なの。 「いいよ、慧はもう颯に守られときな」 「…………」  守られる……??  誠の言葉に首を傾げながら、颯を見ると、颯はクスクス笑って、守られといて? と笑う。 「別にオレ、か弱くないし……」  むむ、とむくれながら呟くと。 「でもさ、慧。実際、もうΩなんだし、今までよりももっと、色々気を付けた方がいいよ?」  誠がちょっと真面目な顔でそう言う。 「ヒートとかも大変なんだろうし。フェロモンが番以外効かないってだけで、別になんだってできるんだから。どんなもんか、様子見ながら、だよな」 「困ったら言えよ。今まで通り」  健人と昴もそう言って、オレを見つめる。  ……その心配の感じは、ほんとに心配してくれてるとしか思えなかったので、うん、とだけ頷く。 「なあ、もう二人で暮らすのは慣れた?」  誠に聞かれて、颯とオレ、顔を見合わせる。 「オレはもともと自分ちに慧が入ってきたからな。すんなり入ってきた気がして、ただ楽しいだけだから。慧は慣れた?」 「――――……」  ただ楽しいだけ、とか。  嬉しすぎてニヤついてしまいそうで、顔を引き締めるためのしばしのインターバル。 「あ、まだ慣れてない?」  オレのちょっとの真顔の沈黙を勘違いした颯に、そう聞かれて焦る。 「もう慣れた」 「ほんとに? いいよ、まだ慣れてなくても全然」 「慣れたよ、楽しいもん」  とっても焦ってそう言うと、なら良かった、と颯。オレがホッとしたところで、昴が笑う。 「つか、今の焦り方から見ると、どーせ今のは、颯がただ楽しいだけとか言ったから、嬉しすぎて答えられなかっただけだろ?」  昴の、ニヤニヤした感じの言い方に、むきー、と睨むと。  颯が、オレを見つめて、そうなのか? と笑う。  違くないので違うとも言えないし、あってるとも恥ずかしいから言えないし、むー、昴めー。  颯にもよく色々バレるけど、昴にも……ていうか、誠にも健人にもか。あれ? おかしいな。んー……。 「こういうとこ、ほんと可愛いよね」  誠がケタケタ笑いながら言う。 「αん時から変わんないけど」 「なー。別にΩになったからとかじゃないよな、慧のこういうの」 「だな」  昴と誠と健人の三人はなんだかとても面白そうに笑いながらそう言うと。 「まあ、可愛がってあげて、こういうとこ」  誠が颯に向かってそう言うと、颯は、「分かってる」と即答。 「…………」  なんか良く分かんないけど、もういいや、ツッコむと、色々恥ずかしいことになりそうな気しかしないし。スルーしよう、スルー。 「まあでも、二人で暮らすのにも慣れてるっぽいし。指輪で、ほんとに結婚してるんだってアピールもできてたし、落ち着くかな」  誠の言葉に、ん、と颯が頷いて。それから、ふ、と気づいたように。 「でも来週金曜からオレ、二泊三日のゼミ合宿でさ。居ないんだよな」 「へー。じゃあ、慧、一人で留守番なんだ」 「うん」 「落ち着いたばっかの頃に泊りで居ないとか慧には悪いけど」  颯の言葉に、オレはブンブン首を振る。 「ゼミ合宿はしょうがないじゃん。大丈夫、もう何がどこにあるかは大体分かったしさ」  オレがそう言うと、昴はククっと笑いながら。 「とか言って、寂しくて泣いてんじゃねーの?」 「しないっつの!」  怒ってるオレをスルーして、「確かに」と誠と健人も頷いてる。  颯はそのやりとりを見ながら、あーなるほど、と何かを納得してる。 「……颯、何がなるほどなの?」  オレがそう聞くと、颯は、オレを見て、クスクス笑う。 「ここ四人で居るの、よく見てたけど。関係性が、大体分かった」 「…………」    ここでのやりとりを見て、関係性がって言われると。  ……なんか、オレの立ち位置が微妙すぎる気がするので、ちょっとむむむ、と黙っていたら。ぷは、と三人が笑い出す。 「そうそう、こんな感じで超仲良しだよなー?」 「そうそう」  誠と昴が笑いながら頷いてそれから、健人が颯を見つめながら。 「颯の取り巻きとかとは大分違うけど。でも、慧の周りは大体こんな感じで仲良しっつーか、なんか人が周りにいるよな」 「……なんかオレで遊んでない?」 「可愛がってるの間違いじゃね?」  健人は言うけど、笑ってるし!  もー! と健人を見てると、オレの隣で颯が。不意に。 「まあ。……すげー可愛いもんな、慧」  ふ、と笑いながらそう言って。  ……何やら、めちゃくちゃ愛おしそうに見つめられてしまい。  一瞬で、止めようもなく、ぼっと火を噴いたオレ。  三人に可愛いとか言われれても、全然で、むしろ怒ってたのに。  ……颯の可愛いは、無理だー。 「…………っっ」  テーブルに突っ伏して、もう何も聞こえない状態で、しばし、時を過ごした。    オレの仲良し三人と。颯の、初めての飲み会は。  なんかずっとそんな感じで時が過ぎて。  始まるまで喧嘩腰っぽかった昴もなんだかすっかり仲良くなって、無事(?)終了した。

ともだちにシェアしよう!