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第96話 飲み会の後は。

 颯と皆と飲んだ翌月曜の昼。食堂で三人とごはんを食べ終わったところで、昴が、そういえば、と話し始めた。 「オレさあ、颯のこと、もっととっつきにくくて嫌な奴かと思ってた」 「あ、そう、なの?」 「話したら全然イメージ違った。黙ってる時と、雰囲気違うよな」 「あ、オレもそう思った。すごい話しやすかった」  そっかぁ、と頷いてると、健人が「颯は見た目でちょっと損してるよなー」と笑う。  損してる?   ……超カッコよくて、超羨ましいけど?   損??? 「得しかしてないと思うけど」 「……あー……。そういう意味じゃないんだよな……」  少し黙った後、健人が苦笑してオレを見つめる。 「昴が言ったみたいにさ、冷たく見られがちってこと。分かる?」  聞かれて、んーと、考えてから。   「そっか。そだね。それはあるかも。クールな感じするもんね」  ふむふむ。まあカッコよすぎるからな。うんうん。  と、一人、それなら分かる気がする、と納得していると、「つかさあ」と誠。 「得しかしてない、だって」  誠がオレのセリフを繰り返して、クスクス笑ってる。 「なんかいつのまにそんなにべた惚れんなったの。あ、言ったの? 週末」 「何を?」 「好きだって。颯に」  その質問に、う、と黙って、俯いた。 「……」  金曜帰ったら、めちゃくちゃ抱かれた。  何でか良く分かんないけど、可愛いなーほんと、て何回も言われて。  颯は「好き?」とかは聞かない。「気持ちいい?」は聞く。  だから、なんか、気持ちいい、みたいなのだけは、分かんない位言ってた。  なんかもう、激しかったそれがめちゃくちゃ恥ずかしくて、土日はことあるごとに、それ思い出して、真っ赤になったし。なんかそうこうしてると、また触れられて、まためちゃくちゃ可愛いって言われて。  とにかく、なんかこの週末、ほんとに、人に言えないくらい、イチャイチャしてた。  でも、好き、という言葉はまだ言えてない。  ……なんか、言わなくても、颯は、オレが好きなの知ってるだろうし。  別に言ってって思ってる感じも全然しないけど。  颯がたまに言うのは、変性して体も変わるし、色々思うことあるだろうから全部ゆっくりでいいよって。とにかく、オレの隣に居てくれればいいから。って。  ……ちょっと甘えてしまっているかも。  いや、でも、ちゃんと好きって、言うけど。うん。  なんかここまで言えないで来ると、言おうとすると、喉がひっかかるというか。なんか、ほんと、微妙で。 「……今度言う」  そう言ったら、三人は、やれやれと苦笑。 「もう好きなのバレバレなのにな?」  昴が言うと、ほんと、と二人も頷いて、オレを見て笑う。 「ていうか、混んできたから、しー!」  周り、席いっぱいになってきたし。聞こえちゃうからやめて、と言うと、皆も笑って頷いた。 「あ。そういえば」  と誠が何かを思い出したように言って、「あれ貰った?」と聞いてくる。 「あれって?」 「イケメン投票の推薦の紙。書くって言ってたよな?」 「あ、もう配ってるの?」 「そう言ってた」 「じゃあもらっこよっと」  そう言うと、皆、ニヤニヤ笑う。 「なんだよ?」  と聞くと。誠がクスクス笑う。 「好きも言えないのに、イケメンコンテストで旦那の推薦文書くのってどうなの?」 「……ぐ」  ちょっと何も反論できない。 「そっちのが恥ずかしくない?」  昴にも言われて、うーん、としばし考えてから。 「でも誰が推薦者かは発表されないし、推薦文も表には出さないって言ってたから。係りの人が見るだけみたいだし。エントリーするのに必要なだけって言ってたし。いいじゃん」  颯のいいとこは、オレが書きたかったし。  皆の前で読まれたるとかなら、恥ずかしいからやめたけど、去年も読まれてなかったし。    何書こうかなぁ、推薦文。  あっ、そうだ。早く紙貰って、今週颯が合宿で居ない間に、書こうっと。  巣作りもだし、推薦文も。  なんだか楽しみ。ワクワクしてくる。  

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