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第98話 巣作り前夜 ※

 それから木曜まで。  なんだかずーっとそわそわして過ごした。  颯がゼミ合宿の準備で買い物に行くのに付き合ったり、資料を買いに本屋さんにも一緒に行ったり。  そんなんで放課後に一緒に出かけることも多くて、なんだかほんとにあっという間に、日が経って行った。  そわそわしたまま、木曜の夜。  明日は早いから、早めに寝ようかなーと颯が言うので、割と早い時間に寝室に入った。  颯が電気を消して、小さいルームライトだけにすると、ベッドに入って早々に、颯がオレを抱き寄せて、横になった。 「……慧、何してる予定?」  颯の腕の中にすっぽりと取り込まれたまま。耳元で、颯が聞いてきた。 「ん? あ、えーと……」 「どっか出かける?」 「ううん。出かけない予定。家で待ってる」 「つまんなかったら出かけてもいいけど」 「んー……でもいい。大丈夫」  だってオレ、巣作りするんだし。  超楽しみだし。 「なー、颯?」 「ん?」 「明日の用意、もうした?」 「したよ? さっきしてただろ?」  クスクス笑う颯の、揺れるのが伝わってきて。  その優しい感じに、なんか、ふわ、と嬉しい。 「……あのさ」 「ん?」 「今着てるパジャマって、持ってく?」 「パジャマ? これ?」 「うん」 「持ってくのはもう、別のを入れたよ。パジャマっていうか、部屋着っぽいやつ持ってくから」 「そうなんだ。そっか」  ……はー、良かった。  パジャマって。なんかすごく、颯の匂い、する気がして。  置いてってほしかったんだよね。あー良かった。  一人で、内心ほっくほくになっていると。 「何でパジャマ?」 「ん?」 「何でパジャマ持ってくか、聞いたの?」 「…………」  ……確かに。  ……何で聞いたの、オレ。いや、もちろんオレ的には、巣作りのためだけど。  颯には内緒でチャレンジするのに、これ、何のために聞いたか、巣作り以外の理由って何かある? 「……いや。あの」 「うん?」 「……脱いだの、もってくのかなぁって思って。置いてくなら……そぅ、あの、洗濯、しとこうかなーて」 「ああ、洗濯?」 「ん」 「じゃあ洗濯機に入れとくから」 「あ、うん。……あ、颯?」 「ん?」 「回すのオレがやるから。入れとくだけでいいから」  だって、洗濯したら匂い消えちゃうって、Ωの皆言ってたし。 「ん、分かった。任せる」 「うん。任しといて」 「ああ」  クスクス笑いながらだけど、颯が頷いてくれるので、なんとなく、大丈夫だったかな?と、ほっとしていると。 「……明日早いし、もう今日は寝ようかなと思ってたんだけど」 「ん」 「……やっぱり、抱いてもいいか?」  頬に触れた手に、顔を上げさせられて、颯を至近距離で見上げる。  綺麗な、まっすぐな瞳  吸い込まれそうだなーって、最近思ってしまう。  毎日毎日、颯のことが、好きになってくの、ほんと、なんかの病気みたいに。 「ていうかさ、颯」 「ん?」 「オレ、ダメなんて、言わない」  じっと見つめてると、ドキドキする。  ふ、と笑ってくれて、そのまま唇が触れてくると。心臓が早くなって、体中の血が、熱くなるみたいに。  舌が触れて、絡まる。  体に触れられて、熱くなった中を開かれて。  もう、心臓バクバクで、頭真っ白で。  颯のするのは全部気持ち良いにつながってて、あっという間に受け入れる準備をする体。  なのに、いつもなかなか、颯は、入っては来なくて。  めちゃくちゃ体が溶けて、気持ちいいしか、なくなったところで、颯と繋がる。 「……んっ……ふ……ッぁ」  ぎゅ、と抱きつく。 「……離れんの、嫌だとか」  オレを深く突きあげながら、そう言う颯を頑張って見上げると。 「……慧も思う?」 「……う、ん。……おも、う」  なんだか、たまらなくなって、涙が零れる。 「はやて……」  ぎゅう、としがみつく。  颯の体からこういう時香る匂い。  ほんとにどうにかなりそうで。 「……っ……んん……」  唇を塞がれて、そのまま、激しくなった動きに、すぐに快感に取り込まれる。  大好き、颯。  ……抱かれながら、ずっとそう思ってた。      

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