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第118話 静かな嫉妬?

「颯の匂いって何? 皆、わかるの?」  オレの質問に、三人は「慧、ほんとに匂い分かんない?」と苦笑い。 「オレ、颯の匂いは分かるよ?」 「今しない?」 「……」  ……今しない、というか。大体、いつもなんとなく、颯の匂いはふわふわしてる気がするんだけど。 「んー?? 颯の匂い、いつもオレからしないんでしょ?」  オレが聞くと、誠は「いつもは気づかない」と言って、健人が「でも今日は分かる」と言う。  ……オレが感じるのはいつもの感じ。  別に今日がすごいとか、そんな感じはないんだけど。……でもオレの、この嗅覚はあてになんないからなぁ……。  目の前で、颯のが強くなる時は、もう、体の熱が急上昇するから分かるけど。 「――――……慧さあ」  隣の昴が低い声を出してくる。 「昨日オレ、匂いついてるって教えたよな?」 「え? あ、うん」 「それで、颯とどうした?」 「颯に聞いたよ、オレから変なにおいする?て」 「で、何て言ってた?」  えーと。なんだっけ?  えーと……。 「慧は分かるのって聞かれたから、昴が教えてくれたって言った。オレは、なんも匂いとか分かんなかったから」 「その、助けられた話はした?」 「した」 「……颯と、喧嘩みたいになった?」  ええなにそれ。なってないよ、何で喧嘩になるの??  しばらく考えて、首を傾げてしまう。 「全然。いつもどおりだったけど……」  ていうか。いつもよりも、なんかもっと優しくというか、可愛がってくれてた気がするというか。  首を傾げながら、「普通に優しかったし、喧嘩なんて全然してないよ?」と言うと、昴はため息をついた。  むむ、と昴を見ていると。昨日は会わなかった健人と誠が話が見えないみたいで、不思議そうにしてる。昴が、二人を見て口を開いた。 「昨日の午後、慧、新たに絡んだっつーαの匂いさせてたんだよ」  そう言うと、健人と誠がオレをマジマジ見つめてくる。 「そうなのか?」 「え、何で?? 誰、新たなαって」  そんなびっくりされても……と思いながら。 「イケメンコンテストに申し込みに行くとこで、階段で転んで助けてもらったんだけど……そん時かなぁって」  そう言うと、二人は、ん? と眉を寄せる。 「そんなんで匂いなんてつかないし」 「敢えてしないと、つかないから」  誠と健人が同じように言って、昴も、そうだよな、と頷いてる。  ……そうなんだ。  うーん。そうなのか。ふむふむ……。 「ん? ……てことは、え、昨日オレ、わざとつけられたの??」 「ていうか今更ー! じゃなきゃつかないってば」  誠が苦笑い。 「え。何でそんな??」 「それは分かんないけど」 「えー……なんか全然意味分かんない」  うーん、と考えていると、昴が、ため息。 「颯は絶対気づいて、でも慧はなんも分かってないし、慧のせいじゃないからなんもいわなかったけど、牽制したってことだよなぁ……」  そう言ってから、はー、とため息をついた後。 「あ、そうだ、誠。こないだお前、オレが慧のこと好きなんじゃないかと思ってたとか、わけわかんねーこといってたよな」 「え? ああ、颯と一緒に飲んだ後だよね? もう絶対違うと思ったから言ったんだけど?」 「それ、絶対、颯に言うなよな」  えー? 何言ってんの、どうして話が今度そっちにとんだんだよ。もう全然分かんない。 「颯、絶対、静かに嫉妬するタイプだから。余計なこと言うなよ」 「あー。……ね、そうだね。分かった」  誠がクスクス笑う。  健人は、ちょっと肩を竦めて、笑いながら。 「オレは颯の嫉妬とか、昔の颯からは想像できないんだけど」  そう言って、ちらっとオレを見る。 「……慧だけは違うのかもな」  そんな風に言われるけど、うーん、と考える。 「ていうか嫉妬って……颯、そんな感じ全然しなかったよ?」 「だから静かにって言ってんじゃん余計怖いっつの」  はーとため息の昴。 「もー、昴、ため息多すぎない?」 「……誰のせいだよ」  嫌そうに昴が言う。

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