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第119話 ヤバいマーキング

 嫉妬……??   颯が嫉妬かあ……。  んー。それって……嬉しい、かな。  嫉妬してくれるってことは、そんだけ好きだからって気がする。  あー。でも、嫉妬するって、あんまりいい気分じゃないだろうから、あんまり、嫉妬はさせたくないな……。  ていうか。もう。ほんとにわざとなら、匠に文句いっとかないと!  と思ったけど、その前に気になることを確認。    「なあなあ、におい付けるってどうやんの?」  聞いたら皆、えって顔でオレを見る。  それから、ぷ、と笑う三人。  「本能だから口で言えない」  誠が言うと、昴と健人もそうそう、と頷く。 「αん時、そういうのしたいって時なかった?」 「……無いな、まったく」  そっか、と誠がまたクスクス笑ってる。 「慧っぽいっていうかなんて言うか……」  健人にまで言われる。 「Ωのフェロモンは、出したり止めたり、自由になんないって聞いたんだけどαはつけようとすればつけれるの?」  そう聞くと、昴が頷く。 「つけれる。ていうか、つけようとしない限り、他人にまで分かる位つかないよ。今まで慧から、颯のも感じたこと無かったし。抱きとめたくらいではつかないよ」 「絶対? 慌てて、フェロモン出ちゃった、とかは?」  確認の意味で聞いたのだけど、皆、苦笑に変わる。 「そんなまぬけな奴居たら、顔見てみたい」  と誠。 「んー……じゃあ、匠、ほんとにわざとなのか……」  もう何してくれてんだよー。  ……つか。オレもαん時、やろうと思えば、匂いつけたりできたのかな。  うーん。オレ、ほんとに色んな意味で、レアなのかな。良く分かんねー。変性の前から、αとしての機能はあんまりなかったのかなあ。  三人がオレを、じっと見つめてくるので、「何?」と皆を見回すと、健人が「匠って誰?」と聞いてくる。 「え? ああ、昨日会ったα」 「匠って苗字?」 「いや。名前」 「何で知り合ったそばから名前呼び捨て?」 「え、だって。……そう呼んでって言われたから? まあ、後輩だったし」  健人の続けての質問に答えていると、皆、はー、とため息。 「慧のいいとこなんだけどね……すぐ仲良くなれるの」  苦笑いの誠に、昴は横で、首を振る。すると昴が間髪入れずに。 「いいとこだけど、少しは警戒してほしい」 「……なんとなく分かる」  はは、とまたまた苦笑いの誠。  むむ、と黙っていると、健人が、じっと見つめてきた。 「颯に今日、何か言われた?」 「ん? 何か……あ、良く分かんないけど、今日は一人で行動しないでって言われた。今日は皆とずっと一緒の授業だからって言ったら、一人になりそうなら呼んでって言われたんだけど……多分なんないよって、答えた」 「なるほど……」 「なるほどって何?」 「匂いつけたから、心配だったんだろうな。他のαが反応しても困るだろうし」 「何で反応すんの?」 「においつけるって、マーキングみたいなもんだからさ。犬がさ、自分のテリトリーをめちゃくちゃ主張してさ、それに反応して逆に戦おうとするまた別の犬が現れたら困るだろ?」 「……んん?? なんか、良く分からない……」  んー、と皆が考えた後、昴が。 「誰かが、αの匂いさせてるお前に興味持って、その匂いに上書きしたようとして近づいてきたら嫌だろ?」 「……よくわかんないけど。嬉しくない、かな?」 「まあ、颯のそのヤバいマーキングに対抗しようなんて奴、居ないと思うけど」 「絶対居ない」 「無理だよな」  三人が、いやだいやだと首を振ってるのを見て、そんなにヤバいの??と聞くと、昴が苦笑い。 「上位のαって感じ。颯を知らなくてもそれは分かる。昨日の匂いなんて超可愛く感じる」 「それってさ、αなら、誰でも感じるの?」 「αもΩも感じる。オレらは、颯のこと知ってるから、颯のだって分かるけど。昨日の奴のは、誰だよって思ったけど、匂いは感じた。……つか、慧はほんとに何も感じなかったのか?」 「昨日は感じなかった。今日は、分かるよ。ていうか、いつも、颯の匂いはしてる気がするから……逆に、いつもは分からなくて今日は分かるっていう、皆の方がよく分かんないんだよね……」 「いつもしてる気がする、か」と健人がそこに反応してきて、その後、誠が「何それ、のろけ??」と笑う。 「え。のろけじゃないよ」  恥ずかしくなってプルプル首を振る。 「匂いつけた奴、今日の慧に会ったら後悔するだろうね」  クスクス笑う誠に、あ、と思い出した。 「あ。そうだ、今日のお昼、匠に会うんだ。文句いっとこ」 「はあ??」  三人の視線が痛い。 「何? 会う約束してんの?」 「ち、ちが……変な意味じゃなくて、オレ、コンテストの紙出しに行くんだけど、匠もそこに用があるって」  何でだか良く分からない言い訳をしていると、昴がため息とともに「オレも行く」と言った。   「いいの?」 「お前ひとりになるなって言われたんだろ? 全然行きたくねえけど、行く」  そんな言葉に、「ありがと」と返すと。 「……んー、もうほんと、今更」  しょーがねえなー、と笑われて、オレも「ごめんね」と苦笑い。  

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