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第124話 過保護?
「あの時間じゃどーせ最後までとか無理なんだろうから――――よく颯、我慢したよな。すげー可哀想」
「う……」
昴の言葉に、なんだかとってもいろいろバレてるみたいで恥ずかしいやら。可哀想って言葉に、確かに……とも思い、言い返せないでいると、誠がまあまあ、と笑った。
「可哀想ってことはないんじゃないの。颯は喜んでたでしょ。慧が好きって言って」
誠の助け舟に、ん、と頷くと、昴はチラッと誠を見る。
「甘やかすなよ、もう。慧はちょっと反省しろ」
「……う」
「颯はお前が好きなんだろ。でもって、昨日は独占欲で朝からあんなんにして、後悔してたかもしんねーけど、そこにひょこひょこ行って、好き、とか。もうアホか」
「……ん」
たしかにあの後、キスされて、なかなか離れられなくなってしまったけど。
「……気を付ける」
何をどう気を付けるんだかいまいち分かんないけど、とりあえず、好きとかは外ではやめよかな。と思ってると。
昴はまた深いため息をついた。
「……慧は、昔からだけど……なんか、人を撃ち抜くんだよな……」
「撃ち、抜く?」
どういう意味?
首を傾げた所で、健人と誠が、ああ……と苦笑。
「何??」
聞くと、昴は首を振った。
「……意味分かんねーならいい」
昴はそう言って、苦笑してる。
「昴は完全保護者だよな」
はは、と健人が笑う。どういう意味、と見つめてるオレに気づいた昴が、「もーいいから何食べんのか決めな」とメニューを向けながら、ふと気付いたようにオレを見つめた。
「颯に、αと会うの言ったか?」
「あ、うん」
「来るって?」
「行く? って聞かれたけど断った。昴来てくれるし、自分で話してくるって言った」
「それでいいって?」
「うん。いちいち颯が出てくるのも……って話したんだ」
そう言うと、昴は少し考えて、頷いた。
「まあ、そうか。颯が自分の番に超過保護、みたいに噂されてもな」
「うん」
そうなんだよね、と頷いていると。
「でもそれだと、昴が超過保護ってことになっちゃうけど」
誠がクスクス笑ってそんな風に言ってくる。
「別にオレは自分の番にってわけじゃねーから、噂にもなんねーよ」
「過保護は認める?」
「は? 別に過保護じゃねーし」
昴が言うと、誠と健人はクスクス笑う。
「なんか昴、いつもありがと……ていうか。二人も、ありがと」
そう言うと、誠と健人は、ふ、と笑う。
昴は「だからさっきも言ったけど、今更。――――いいから、早く食べるもの決めろよ」と苦笑した。
ん、とメニューを見ながら、ふと。
「あのさ」
そう言うと、皆がオレを見つめる。
「……匠ってさ、なんで匂いなんかつけたんだと思う? オレのこと好きとかそんなんじゃないと思うんだよね。オレ落ちただけだし」
「それなー……分かんないんじゃない? 何かで気に入ったかもしんないし」
誠のセリフに、少し考えて、無いよと笑ってしまう。
「颯もコンテスト出るって言ったから、ライバル心かなぁ」
皆が、んーと苦笑して、聞くしかないな、と言う。まあそっか。と頷いていると、健人がオレを見つめる。
「今日会うってなったのは向こうが言ったのか?」
「昨日時間無くなっちゃったから、明日出すことにするって言ったら、あいつも来るって言ったんだよね……あ、昴、オレ、自分でちゃんと聞くから」
「分かってる、口は出さねーよ」
「うん」
ふ、と笑って見合う。
「あ、別に喧嘩する気はないからね?」
そう言うと、昴は、じっとオレを見つめてくる。
「え、なに?」
「はいはい。分かってるし。ていうか颯に絡んでた時並みに、喧嘩売ってみたら?」
「オレ、別に颯に喧嘩売って……」
むっとして言い返そうと思ったけれど、そこで口ごもる。
「……売ってた?」
聞くと、皆、ぷ、と笑ってる。
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