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第127話 エントリー

「まあ改めてさ。危ない奴じゃないのは分かって良かったけど、ちょっと悪ふざけがすぎる。二度とすんなよ」  昴がかなり圧を込めて言うと、匠は「はい」と頷いてからオレを見た。 「先輩すみませんでした」 「うん。……いいよ。まあ。おかげでオレ、颯に言いたかったこと、言うきっかけになったし」 「そうなんですか?」 「慧。そういうこと言うな」 「え、何で」 「ちゃんと反省させてからにしろよ」  え、と思って、匠を見上げる。 「反省……もう、したでしょ?」 「……はい」  ぷ、と匠が笑って頷く。 「ほら。笑っちまってんじゃんか」  昴の呆れたような声に、はは、と苦笑いを浮かべたオレを見て、匠は少し考えながら。 「なんか先輩って……」 「ん?」  オレって? 止まって言葉を待ってると、「あ、いや、なんでもないです」と言われた。意味を聞き返す前に、続けて話始める。 「オレ、反省はしてます。もうしませんから。じゃないと、神宮司さんにフェロモンで跳ね返されそうな気がするので」 「フェロモンで跳ね返す……って?」  ぷぷ。何言ってんだろう、こいつ。 「笑い事じゃない感じ、分かんないですかね?」 「え、冗談でしょ?」 「いや……あ、もういいです、大丈夫です」  匠がまたクスクス笑ってる。昴が息をつきながらオレを見た。 「ほら。慧、出しに行くんだろ。で、そっちはマジで辞退すんの?」 「はい。一緒にいきます」   昴の質問にそう返した匠と昴とオレで、階段を上って、実行委員会の部屋をノックした。どうぞと言われて、中に入る。 「すみません、イケメンコンテストのエントリーお願いします」 「あ、はーい」  明るい声で返事をして、中にいた女の人が、オレ達のほうに近づいてきた。 「自薦ですか、他薦ですか?」 「あ。他薦です。この人を……」  書類を出すと、彼女は、名前を見た瞬間、ぱっと笑顔になった。 「わー、去年の一位の颯くんですね、また出てくれるんですね!」 「はい」 「やったー、華があるからすっごく盛り上がるんですよねー」  わあ、颯が出るの喜んでくれてる。嬉しすぎる。  ふふ、と笑ってると。 「推薦人は神宮司慧さん……ん? 神宮司……。あっ! もしかして!」  絶対知ってるな、結婚してること。  学校のどこまでの人が知ってるんだか分かんないけど。 「結婚のお相手の方、ですか??」  頷くと、めちゃくちゃキャーキャー言いだして、そのせいで、奥に居た人達が、なんだなんだと皆、前に出てきた。受け付けた彼女が簡単に説明すると、オレはなんだかすごく注目を浴びてしまう。 「旦那様のエントリーってことですよねっ?」 「あ……はい」  て、照れる……。  かなり恥ずかしくなりながら頷く。 「わー、良いですねー仲良しなんですねー」  素敵ですねーとキャッキャッと楽しそうにしながら、書類のチェックをしていく。 「はい、書類は大丈夫ですよ」 「じゃあ、お願いします。あ、これって、コンテストで読まれたりしないですよね?」 「この書類は、読まれないですよ。コンテストの中で、色々インタビューとかはしますけど」  ほっ、良かった。 「お前、何書いたの? そんな読まれたくないようなこと?」  昴が楽しそうに聞いてくる。 「ふふ。素敵ですよ~ 当日、読みたい位ですね」 「あ、ほんとに勘弁してください」  そう言うと、クスクス笑いながら彼女が頷いて、「手続きは完了です」と言ったところで、ほっと一息。  良かった、無事完了。 (2024/1/29) 番外編はあとがき書いていた通り、 本編が終わった後ろにまとめてのせますのでいったん下げました。

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