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第143話 幸せすぎでは

 なんだかよく分からないのだけど、颯って、もしかして、オレが美樹ちゃんを可愛い可愛いって、好きだとか、思ったってこと?  そんな訳ないじゃんね。  なんでそんなこと思うんだろ。絶対無いし。ていうか、そもそも、颯のことを好きだった子だし。颯が一時とはいえ、付き合った子だし。  えーと……?? 「――――……」  じっとオレを見ていた颯が、ふ、と息をついて何だか少し笑った。  くい、と腕を引かれて、路地裏。 「……馬鹿なこと言った」 「……?」 「可愛いとかしみじみ言うから。……ちょっと妬いたのかも」  颯が道には背を向けてて、オレは、向こうからは隠れてる。道行く人は、もしこっちを見ても、颯の背中しか見えないと思う。  オレは、我慢できなくて、颯の頬に両手を触れさせた。 「な訳、ないじゃん……?」  じっと、見つめ合うと、颯の瞳が、ふ、と細められる。  愛おしそうに見つめてくれるのが、嬉しくて。胸が、トクン、と弾む。  胸がトクトクしたり、きゅんて表す以外できないような感じになったり、ドキドキして、熱くなって大変になったり。  オレは、颯と居て、初めてなった。   「――――……」  ゆっくり唇が触れてきて、頬から離した手で、颯の服を握り締めた。 「……ん」  少し、深く重なってくる。  舌が触れると、そのまま、深く絡んできた。 「……ン、ふ……」  熱い。キス。舌も、息も。オレの頬や顎に触れてる手も。 「……は、やて……?」 「――――ん?」  唇が少し離れた時に呼びかけると、ふ、と笑んでオレを見下ろす。 「やい、たの……?」 「…………」  颯は、ちょっと決まり悪そうに無言の後。 「……バカだよな」 「――――……」  ぷるぷるぷる。  首を小刻みにいっぱい振ってしまう。 「……なんか、颯に妬かれるとか、すげー嬉しい」  ふふ、と笑ってしまうと、颯に抱き寄せられて、覆いかぶさるみたいにキスされる。 「……ん、んん……っ」  ちゅ、と舌が絡む音。  ぞく、とした感覚が背中を駆け上がって、びく、と震えてしまう。 「慧……」  しばらくキスされつくして、もう熱くて、は、と息を吐く。 「――――……お前がすることも言うことも、全部マジで可愛い」  あんまりキスが濃厚過ぎて、じんわり涙が浮かんでたオレは、ぽー、となったまま、颯を見上げた。 「……オレにとって、お前だけが、可愛い」 「――――……」  うわー。  ……なんかもう。  余計なことしたり、言ったり、結構してると思うのだけど。オレ。 「颯……」  嬉しすぎて、少し背伸びをして、ちゅ、とキスしたら、また唇が重なってきた。  …………幸せすぎでは、オレ。

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