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第148話 お互い不思議
――――……やっと離されて、ほんの少しだけ息が落ち着いてきた。
めちゃくちゃイかされて。
頭も体も、本当にぽわぽわしてて、くらくらする。
そう思ってたら、抱き寄せられて、ぎゅう、と抱き締められた。
そっと、その背に手を回す。
颯の弾んでる胸の鼓動も心地よくて、胸の筋肉の弾力がきもちよすぎるーなんて、心の中で思いながら、そのままウトウト。
「……みず……」
飲みたい……。と思ったら、思わず口に出ていた。
寝言みたいな感覚。
「水?」
「……ぅん」
颯に聞かれて、少し正気に戻って、頷く。
オレから少し離れてペットボトルを取ると、ほら、と差し出してくれた、けど。
「……起きれない……」
……だるいのは確かだけど。ほんとは起きれる。……でも、そう言ってみたら、颯は、クスッと笑って、自ら水を煽った。オレの頭に腕を回して、少し起き上がらせてくれると、口移しで飲ませてくれる。
「……もっと?」
「ん」
こくこく頷くと、颯がまた、優しく笑う。
合わさった口から流れてくる冷たい水。ごく、と飲み込むと、そのまま舌が絡んでくる。
「ん、ふ……」
甘えるみたいな声、だなあ……オレの声。
……勝手に出てしまうのだけど、ふと我に返るとちょっと恥ずかしい。
「……は、やて……」
「ん……?」
「……なんかさ、もう全部気持ちよくて……」
「――――……」
「……ヤバい、颯」
じっと見つめていると、颯はちゅ、とオレの頬にキスしてきた。
「――ヤバいのは、慧だけどな……」
くすくす笑いながら、また唇が重なってきて、舌が触れる。
「慧……」
唇の間で呼ばれて、キスされてると「ん」とまた声が漏れる。
好き。
颯。超、好き。マジで。……好き。
何でこんなに好きなんだろう。
少し前のオレ、颯なしでどうやって生きていたんだろう。
と思うくらい。
颯が好きで、オレの世界の大部分を颯が占めてる気がする。
「――――……はやて……」
ぎゅう、と抱きつくと、背中に触れた手に、抱き寄せられる。
「……水、こんな風に飲ませてもらうの、初めて」
「ああ……」
くす、と笑って、颯が頷く。
「オレも、こんな風に飲ませたこと無い」
「……ほんとに?」
誰か付き合ってた子にやったのでは、と見上げると、颯は苦笑した。
「……誰にもしてないよ」
そう言われて、なんか、嬉しい。ふ、と微笑んでしまうと、ちゅ、とこめかみのあたりにキスしてくる。
「……なんかさ、終わってからも、体、なんか、ぽわぽわしててさ」
「ぽわぽわ?」
「指先まで気持ちいいのって、意味分かる?」
「――――……」
颯はオレをじっと見つめてくる。
「……続き、しろってこと?」
「えっ……いや。ち、ちがう」
焦ってプルプル首を振ると、颯は苦笑しながらオレを見つめる。
「分かってるけど……んなこと言うと、襲うけど」
「……颯って、まだ、できる?」
さっきもものすごい長かったような気がするのだけど、と思いながら、思わず聞いてしまうと、「全然いける」と言われて、はー、と感心して見上げてしまう。少し後、颯はプッと笑い出した。
「……なんか、毒気、抜かれる。大丈夫、もう今日はしないから」
クックッと笑いながら、颯はオレを見つめて、「慧は、そんな、疲れた?」と聞いてくる。
「ん……疲れた……?」
思わず笑ってしまうと、颯が、ん?と顔を見てくる。
「疲れたって……へんな質問、て思って」
「まあそうだな……」
抱き寄せられて、そのまま一緒にベッドに転がる。
「――――もう寝たいか?」
腕の中にすっぽり包まれたまま、見つめ合う。……照れる、これ。
さっきまで、あんなにいっぱい色んなことしてたけど。
……こんな風に抱き込まれて、見つめられると、照れる。けど。
「……まだ……寝たくない」
「ん――――も少し話すか」
そう言うと、颯は、オレの頬をぷに、とつまんで、クスッと笑った。
颯の顔は。
中高時代に、見つけると即飛んでった頃と同じで、超整ってて、カッコいい。もちろん、大人になってるけど。
あの頃、この顔を見つけると、即飛んで行ってた自分に、
もう何年かしたら、颯と結婚して、とんでもないことして、その後ベッドで見つめ合ったりするんだよって、教えてあげたら、なんて言うかなあ。なんて、変な妄想。
……んー。信じない、かな。
そもそもオレαだったし。自分がΩになるってとこから、信じないよ。でもって、運命の番が颯とか。でも別に運命だから、そうなった訳じゃなくて……好きだって思って……そしたら結局、運命だった訳で。
そんなこと言っても、きっと信じないだろうな。
「……中高の頃のオレはさ」
「ん」
「颯を見つけると、飛んでってたじゃん?」
「……まあ、そうだったかもな」
颯が、その頃のことを思い出してるのか、クスクス笑う。
「……今こうしてるの、不思議すぎて……」
「そうだな……まあ、でも……」
ふ、と笑って颯がオレを見る。
「慧が、美樹と孝紀と、仲良くなりそうってことの方が、不思議だけど」
「……仲良くなれるかな?」
「なりそう」
クスクス笑う颯。
◇ ◇ ◇ ◇
(2024/3/18)
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