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第149話 一日の終わりに
「今思ったんだけどさ」
「ん」
「颯の友達と、オレの友達ってさ、あんまり絡まないでしょ」
オレの言葉に、ん、と考えてから、颯は少し頷いてから、そうかもな、と呟いた。
「やっぱりオレが張り合いにばっかりいってたせいかなあ。健人は、颯と同じクラスの時に、仲良かったんでしょ?」
「そうだな」
「健人は、珍しい方かも」
言いながら、何だかなーと考える。
「だからさ、いつかさ、何かで一緒になれたらいいね」
「何かって?」
「んー。わかんないけどさ。……皆で遊んでみるとか?」
言うと、颯が、くす、と笑ってオレの頬に触れる。
「ごめん、あんま深く決めて言ったわけじゃなくて。なんとなく……そう思っただけ」
「いいと思う」
「……ほんと?」
「慧のいいとこ、オレの仲間にも知ってほしいし」
え、と颯を見つめると、ちゅ、とキスされる。
わー、なんか……颯、好き。……好きだけど。
ゆっくりとキスが離れて、見つめられて、オレは頬をぷにとつままれる。
「んーと……」
「ん?」
「いいとこ、知られるとか、そうなるかはちょっと分かんないかなって思ったけど」
「どういうことだ?」
首を傾げられて、オレはちょっと困りつつ。
「颯に相応しくないーってなったりして」
言ってる内にそんな気がしてくる。どういうことだよ、と颯が笑いながら、オレの頬をぷにぷにつまんでくる。
「だってなんか、颯の仲間って、颯を崇拝してない?」
「崇拝はしてないだろ」
「……いや、してる奴もいると思う」
なんかそんな感じだったよな、高校生の頃。
美樹ちゃんと孝紀が、颯がオレを好きかも、なんて思ってくれたのは、ほんと、意外なくらいで。
「うーん。色々考えてから、作戦練ろうね」
「作戦?」
くす、と颯が笑う。
「颯の友達に、オレが認められる大作戦?」
考えながら言う。お、割とうまくまとまった作戦名になったのでは、と思った瞬間、颯が、ふ、と笑った。
「なんだそれ」
「オレ、結構真剣なんだけどー! だって、卒業したらさ、結婚式するじゃん?」
「――――……」
「そん時までに、颯の友達にも認めておいてほしいし」
颯を見つめたまま言い終えると、颯はしばらく目をぱちくり、すこし大きく見開きながらオレを見ていたのだけれど。
なんだかすごく――――嬉しそうに、微笑んだ。
「ほんと可愛いな、慧」
笑った顔が、キラキラして見える。
――――……ドキ、と心臓が弾む。
む、無駄に、キラキラなんだよ、今そんなにキラキラしなくてもよくないかな。ドキドキした胸に、つい、そんな風に思っていたオレは、ぎゅ、と抱き寄せられた。
「オレの友達が認めようがどう思おうが、オレの番はお前だけだから」
「――――……」
すっぽり抱き込まれて、囁くように言われた言葉に、じんわり、嬉しくて、涙が浮かびそう。
うわ……やばい、颯……もうほんと、ヤバい。
「……まあでも、そうだな。完全に認めて欲しいかも」
「――うん」
こくこく頷いて、埋まったままでいると、颯は、んー、と唸ってる。
「ちょっと考えとく」
笑いを含んだ声でそんな風に言いながら、颯は、オレの髪を撫で始めた。
「もう寝ていいよ。また話そ」
「……うん。おやすみ、颯」
「おやすみ」
言いながら、颯はオレの髪にキスする。
……颯の、おやすみ、は。
いつもいつも、すごく、優しい。
一日のおわりに、ここに居られるなら。
オレ、ずっと、幸せでいられるかも。なんて。思った。
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