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第160話 楽しいよね

「一回、昼休憩入れよう」  颯の声に、皆、顔を上げて、ほっとした感じの雰囲気。  こういうの。ほんと、颯、カッコいいなあって思う。  颯が、あれしよう~とか言うと、自然と皆がすんなり動くの、すごく良い。  授業は休みだけど、食堂はいつも通りやっているので、皆、好きなとこに散って、一時間後に再集合ってことになった。 「慧、どこ行く?」  颯に聞かれて考えながら答える。 「オレお昼はどこでもいいや。早く食べて、作業したい」  まだまだ途中だしと思ってそう言うと、颯は、ん、と微笑んで頷いて、オレを見つめた。 「オレは昼の後そのまま、綿あめとフランクフルトのシフト決めて、焼きそばのとすり合わせるよ。フランクフルトは焼きそばの方に人がいれば、売り子に出しちゃっていいんだよな?」 「うん、いいー」 「焼きそばんとこは、さっき慧と決めたやつで、決まりでいいか?」 「うん。休みとか居たらまた考えるけど。まあでも、うろうろ売り歩く子たち結構いるから、そこから、屋台の方にもどってもらえば良いだけだから大丈夫」 「ん、了解」 「颯、第一行こ? 広いから入れるよね」 「そうだな。――――孝紀と匠も、第一でいいか」  颯に聞かれて、二人が頷いてる。話しながらそこの三人で歩き出した。 「じゃあ皆も第一行く人は行こー。他行く人は後でねー」  オレも皆に声を掛けて、颯たちの歩いてく方向に歩き出した。  隣に並んで歩き出した皆と話しながら、前の方に居る三人を眺める。  颯と孝紀は前から一緒にいるけど。匠は、ついこないだ知り合ったからなぁ。しかも妙な感じで。  匠は、たまに颯を怖いとか言ってるけど、なんだかんだで、割と対等な感じで、楽しそうに話してる時もあるし。 さっきはなんか微妙な雰囲気に、ため息、めちゃくちゃついてたけど。  αの三人。後ろから見てても、なんか目立つんだよなー。  通り過ぎてく三人に、周りの人達の視線が向いてるのが、離れて後ろから歩いてると、すごく分かる。  ……ていうか、この屋台、αがやたら多いって、変なことで、有名になってるってさっき聞いた。  まあ、αって、人口に対したらほんとに希少だし。そんな会ったことないってやつだっていると思う。オレ達の高校が、αとΩに対しての設備や対応が良すぎて有名な私立だったから、そこに結構な数が集まって、そのままここに上がってきてるから、周りに多いっつーだけで。普通はそんなに居ないんだよなぁ。  あれだな、明日明後日、すっごい混むかも。  覚悟しとこ……。 「前、三人。目立つなー」 「ん?」  ……あれ? オレ、声に出してたかなと、思ってしまうほどのセリフが隣の友達から。もう一人の友達も、頷いてる。 「独特な雰囲気だよなー。めっちゃ見られてる」 「孝紀だって、颯と居るからあんま目立たないけど、結構いいとこのαだもんな」 「あ、そうなの??」  そうなんだ、まあでも、言われればそんな気もする。  なんか品が良いというか。 「いっこ下の、匠、だっけ? あいつも、有名だもんな」 「つか、あの組みあわせも、なんかあれだよなー。トップのαたちが張り合うこともなく楽しそうにしてるとか」 「確かにー」  あはは、と笑ってると、ちょっと後ろにいた昴から、「お前絡みで、ああなってんじゃん」とツッコミが入ってくる。 「ん? 何、昴?」  ちょっと下がって、昴と並んで、見上げると。 「匠がここに入ってきたのは、慧絡みだろ」 「ん? ああ。そっか」  言いながらも、オレは首を傾げる。 「匠を積極的に突っ込んだのは、昴じゃない??」 「匠が、いいなあ一緒にやりたいなあとか言って、お前のとこに入ろうとしてるから、ちょっと、別の担当のリーダーにしてやったんだよ」 「……ん。そうなの?」    なんか良く分からない、言い方だな。 「別にオレのとこでも良かったけど?」 「――――……」  黙った昴に、ぽこ、と頭を小突かれた。 「いた。何すんの?」 「お前はさ。αん時からほんと……」  そこまで言ってから、はー、とため息の昴は、「もういいけど」と首を振ってる。  なんだか良く分かんないけど……。 「でもさ」  オレがそう言うと、ん? と昴がオレを見つめる。 「オレ、昴と匠のやり取り、好きだよ」 「――――……」 「あと、なんか匠が、颯を怖い―とか言いながらも、すごい認めてるっぽい感じも好きだし」  ふふ、と笑ってしまう。 「楽しいよね、皆一緒でさ」  そう言ったら、昴は少しの間オレを見つめて。 「……そーだな」  くす、と笑う昴に、ん、と頷いた。    

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