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第178話 壁どん??
かき氷を食べ終え、とりあえず、構内、色々見て回ろうと歩いてるのだけれど。
「んー……」
「どうした?」
「ちょっとこっち行こ?」
「ん」
颯の腕を引いて、あんまり人気の無さそうな校舎の中に入る。
教室の中で、輪投げコーナーとかやってるらしい。
あんまり人、居ないので、ちょっとほっとする。
「普段も颯への視線は感じるんだけど」
「ん」
「今日はほんとすごいね。やっぱり皆、イケメンコンテストとか好きなんだろうね」
「ポスターも、これでもかって顔大きく貼ってあるからな」
「きっと皆、わーかっこいーーってポスター見てたら、あっ、本人発見! みたいな感じなんだろうけど……まあ宣伝になっていいんだけど」
でもでも。むむむー。
なんか一緒に居て、とっても誇らしいような。ちょっと、オレのだからあんまり見ないでって思うような。複雑な気持ちなのだけど、後者は言いたくないので、そこで言葉を止めていると。
「まあ、今日明日で学祭が終われば、いつも通りだから」
「いつも通りでも、颯は見られてるけどー」
「……慧もだけど」
「ん?」
颯を見上げて、なんて? と聞き返すと、ちょっと息をつかれてしまった。
「……慧ってさ、前から思ってたんだけど」
「うん??」
何々。なんか、まじめな顔して。
何かオレ、前から変なこと何かしちゃってますか……ドキドキ。
輪投げとかやってるのは、三階の大教室、二階は展示とかみたいで、なんだかここはとっても空いてて人がいない。
わぁ。ちょっと、朝以来に、二人きりだー。
……ってあほか、オレ、朝から……まだ昼過ぎだし。そんな経ってないのに、ドキドキして。
いや、違う違う、今何か、言われようとしている……。
「…………??」
「……慧も、見られてる自覚、ある?」
「ん? まあ……。αの時はあったような……。でも全然颯ほどじゃないよ。まあ、頑張って、イケメンコンテストとか、出てたけどさ」
ははっと笑ってしまう。
「イケメンコンテストって、恥ずかしいじゃん、自分で出るって言うの。自分でイケメンって言うの勇気いるし。まあ、一応、皆が出れるとか、いける、って言ってくれたから、そうー? って参加してたけど。まあ、何より、颯が居たからだけど」
「……んー……」
「颯は、誰が見てもどう見ても、イケメンだし、なんかもう、オーラがすごいから」
「オーラ?」
「イケメンの……なんかキラキラしたオーラ?? もう顔だけじゃなくて、立ち姿とか……?? ていうか、後ろ姿からでも、イケメン感が漂ってくるっていうか。うーん。……オレ、よく、こんな人に勝負を挑んだなーって、最近見るたび、しょっちゅう思う」
なんだか自分が言ってることが可笑しく思えてきて、クスクス笑いながらそう言うと、颯も、ふ、と苦笑した。
「……オレのことはどうでもいいんだけど。なんか必要以上に良い風に見ててくれてありがとって感じだし。……慧はさ、もうちょっと自覚した方が、いいと思う」
「……何を? 自覚?」
「誰から見てもイケメンって、慧だって、絶対そうだし。というか、慧は、カッコよくもあるし、最近は、なんかもう、可愛すぎて困るって感じまでしてきてて……オレは、もう、結構本気で、誰かに連れ去られないか心配というか」
「えっ、オレ、連れ去られる??」
「番んなっててほんと良かったって思うし」
肩に手を置かれて、ぎゅー、と引き寄せられる。
颯が急に近づいて、すぐ上にある、綺麗な唇に、どき、とすると。
「――――……だから、そういう顔……」
はー、とため息をついた、颯。
きょろ、と廊下に視線を走らせた後、「開くのかな」と、教室のドアノブに触れた。「開いた。慧、おいで」と、先に中に入る。オレが中に入ると、閉めたドアに背中をつくように、トンと押される。
颯の手が、オレの顔の横に伸びてきて、ドアにそっと置かれた。
……颯に囲われた感じで。急に、心臓がばくばくする。
わぁぁ。……壁ドン? ドンじゃないけど。
そっとしても壁ドンていうのかな??
ていうか、これ、こんなにドキドキするのかー。わー。
「……慧」
低くて。甘い、声が、耳元で、囁く。
う、わ……!
ドキドキしすぎて、何も言えない。颯の顔が近づいてきて、綺麗な瞳が目の前に。
「……オレのことばっかり言ってないで、ちゃんと気を付けろよな」
「――――……」
「今はΩなんだし。ヒートとかもあるし。……ちゃんと意識して。分かった?」
「……っ」
こくこくこくこく。
小さく何回も頷くと、ふ、と微笑んで。ゆっくりと斜めに傾けられた顔が近づいて。ちゅ、と優しく、キスされた。
「――――……」
颯の匂いが、ふわ、と香る。
どく、と体中の血が、喜ぶみたいな。ヤバい。好き。
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