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第208話 祈り

お知らせ♡ 昨日の更新、色々あとからセリフとか気になって、大分、最初から通して、直しました💦 先にそちらから読んで頂けると……すみません~💦 ◇ ◇ ◇ ◇  颯達が衣装替えで引っ込んだと同時に、モニターの票のグラフは消えた。今はステージが映っているだけ。最終発表まではもう票の動きは分からない。余計にドキドキする。  次は、好きな私服で登場。  フォーマルなスーツから一転。四人とも、それぞれの好みの服で登場した。  雰囲気一変で、皆の歓声が飛んでる。  それぞれ、それなりにカッコいいとは思うのだけれど、やっぱりオレの目には颯しか映らないみたい。  颯は、ブラックのシャツに、グレーパープルのボトムス。シルバーのチェーンのネックレスに、ブレスレット。  サングラス、してきてるしー。  ひゃー、似合うー! カッコいいな。  それから、結婚指輪してるのも、見える。  ――外した方が有利かも、なんて言われてたのに。  結局、学祭の時からずーっと、つけててくれて。  ……すっごく、好きだなぁ。颯。  今着てる黒のシャツ。形が可愛くて、それ着てると、颯可愛い、って。オレがそう言った服だ。さっきまでスーツだったから、可愛い系のにしたのかな。大正解な気がする。  ――分かってる。颯が、オレを好きって、思ってくれてるの。  ちょっと、どうしてだろ? って不思議に思ってるだけ。  颯の視線も、言葉も、全部、好きって言ってくれてるの、分かってるんだ。  歩いてきて、皆の前で、くるんと回転した颯。  サングラスを外して、ニヤ、と笑うその様が。  死ぬほどカッコよくないですか、と思った瞬間、多分、周りも皆そう思ったみたいで。きゃーきゃー悲鳴? 歓声?  すごすぎる……。  ただ颯を見つめながら、もう、じんわりと、ものすごく好きすぎて、目を逸らせずにいるオレに、不意に視線を合わせてきた颯は、片手の親指で、服を指差して、ふ、と微笑んだ。  オレが好きな服。て。言ってるのかな。  ん! と頷くと、颯は笑って、そのまま観客の方に視線を流して、戻っていった。  しばらくしてから、ふと気付く。 「あ、また声出さなかった……」  出さなかったというか、もう出せなかったというべきなのか。  もう、なんなんだ。颯がカッコよすぎて、もう、なんか。  声援を送るのを忘れて、ぽけっとしてしまう。  このまま応援できずに終わってしまいそうな気がする。  ――だって、ただただ、目が奪われて。  周りの皆は、声出して応援してるのに。肝心のオレが……肝心のって良く分かんないけど、とにかく、推薦もしたのに。一番応援してるのに。  オレ、全然声出せてない。 「次が最後っぽいから――ちゃんと、声出せよ?」 「え、もう最後」 「らしい。思ってること、思い切り、叫んどけ」  昴がそう言うので、オレはもう、うん! と思い切り頷いた。  思ってること。……思ってることか。  颯、頑張れ! 颯カッコいい! とかかな。  皆も同じように声出してる。  名前呼ぶだけでも、もしかしたら動画に聞こえて、見てる人に届くかもしれない。  そんな風に考えた時。ふと、思った。  やっぱり、結婚してるって言わない方が良かったのかもしれないなあって。  颯を知らない人から見たら――アイドルとかに彼女が居ない方がいいっていうのと一緒だよね。  颯の気持ちは、嬉しかったけど。オレが遠慮したほうが良かったのかな。――結婚してるから余計応援させる、とか言ってたけど、そんなの、普通に考えて、難しすぎるよね。  結婚とか関係ない感じで、颯だけを見て貰って、カッコいいかってことなら、颯が負ける筈、ないと思う。  最初の、事前投票はびっくりしたけど――やっぱり、その後の票の伸び方は颯が一番。なのに、今、追いこせてないのは、さっき、結婚したとか言っちゃったからじゃないのかなぁ。司会者の人にも、それはあえて言わないようにって言っとくことだって、出来ただろうし。颯の指輪も外せば良かったし。  やっぱりオレが、「気にしないから外して、コンテスト頑張って」って、言ってあげれば良かったのかも。今更言ってもしょうがないけど。  それで颯が負けちゃったら、ずっとオレ、後悔しそう。  むむむ、と自然と眉が寄ってく。  ――でも、やっぱり。前に戻った颯は、カッコよくて。    ていうか、あの人が負ける訳ない、とか。また思ったりして。  オレの感情が、あちこちに飛んで忙し過ぎて。  ああもう、なんでもいいから、颯に花束渡せますように……!!  手を握って、ぎゅうう、と。祈っていたら、  なんか早くも祈ってる、と皆に笑われた。

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