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番外編 バレンタインデー 3

「結局、チョコあげることにしたんだね」  誠がクスクス笑って聞いてくる。 「うん、Ωの友達たちに聞いたら、少しでもあげたい気持ちがあるならあげたらって言われてさ。そしたもうあげたいって思ったから。そんなにいっぱい食べないと思うから、こう、一粒でめっちゃおいしい、みたいの探してみる。ていうか、余ったらオレ食べてもいいし」  なんだか楽しみで、ふふ、と笑ってしまう。 「バレンタインらへんの、お菓子売り場とか、かなりすごいと思うけど、大丈夫?」 「え、そうなの? 皆、前もって買うんじゃないの??」 「いや、混んでるよ。ニュースとかで見たことあるもん」 「見るだけでも大変そうな気がする」 「えーそうなの? さっと買って帰りたかったんだけど……」  オレがそう言うと「颯には用事ってだけ言ったの?」と聞かれて頷く。   「つか、絶対、何の用事か、バレてると思うけどな」  昴に言われて、「やっぱりそうかな……」と返しながら苦笑すると、昴は、ふ、と笑った。 「来年はもっと早く準備しとけよ」 「うん……てか、いろいろ考えてたら、いつのまにか今日になってたっていうか……ん、来年からはもう、ちゃんと準備する」 「そーしな」 「ていうか、何をそんな考えてた訳?」  皆にクスクス笑われて、んー? と考える。 「オレってチョコあげるべきかなあとか、颯は甘いもの、そこまで食べないから、別のものがいいかなあとか、でも欲しい物は買ってそうだし、そしたらやっぱりチョコかなぁ、とか。どうしようかなぁって、なんかぼんやり考えてるうちに、気付いたら今日だったというか……」  考えてたことを次々上げていくと、皆、何だか面白そうに笑う。 「ていうか、颯なら、なんでも喜ぶと思う。そんな考えなくて平気だよ」  誠がそう言うと、周りの皆がまた、どっと沸く。 「昔の颯からだと考えられないんだけどなー」 「今の感じだと慧からなら、なんでも嬉しいんだろうって思うよな」 「ほんとほんと」  なんだか盛り上がってる皆が一通り言い終えるのを聞いて。  ……んー、としばし考えてから。  なんだか、照れくさくなってきて、ぽ、と顔が火照る。 「そうかなあ?」  思わず照れ笑いで返したら、少し黙ってから、「……なんな訳もう」「すげーなんか全身でのろけられてるし」と皆がぶつぶつ言ってくる。 「ていうか、皆が言ったんじゃんかー」  恥ずかしくなって言い返すけど。 「だからってそんな幸せ全開にされるとさー」 「なー?」 「ほんとなぁ……」 「もー!」  なんなんだよー! と言い返してると、タイミングがいいのか悪いのか、教授がやってきた。  大体周りがわーわー言ってる時は、昴とかは黙ってなんかニヤニヤしてる。加勢もしないし、助けもしないし。むむ。  教授のおかげで皆がちゃんと席に座り出すと、昴が最後にオレを見て一言。 「見てるこっちが恥ずかしいくらい、だよな」  クスクス笑って言うと、もう前を向いてしまう。 「ーーーーーっ!」  授業始まったから、もう声も出せないし。むむむむ、と背中を見つめて膨れてると、隣の誠に、腕をぽんぽん、とされた。 「まあ幸せそうだからいいんだよ。皆、ちょっとからかって遊んでるだけだし。慧の反応が素直だから」  なんだかその言葉すら、なだめようとしてるのか、からかってるのかよく分からないけど。もういいや。  ふー、と息をついて。まだちょっと熱い頬に触れながら肘をつき、そのままノートに視線を落とす。  ………………。  オレからなら、なんでも嬉しい、かぁ。  そうかなあ。  ……そうだといいなあ……なんて。  チョコ渡した時の颯を思い浮かべて。想像すると。  ……きっと喜んでくれる気がして。ふ、と口元が綻んだ。 (2025/3/2)

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