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【第一章 夜に秘める】月が見た凌辱(10)
「あ、姉上のいる王都から軍を退け。ならば、この愚行は忘れてやる」
「……姉上ねぇ。昨年でしたか、国王が亡くなられて殿下のお姉さまが跡を継がれたのは」
あなたの姉上なら、さぞかしお美しい女性なのでしょうね──自分を見下ろすカインの眼に剣呑な光が宿ったと感じ、アルフォンスは目元を引きつらせる。
「たとえグロムアスの王といえど、姉上に何かしたら許さん!」
何もしませんよとカインが肩を竦める。
大きなため息は呆れからくるものか。
「いいでしょう。ひとまず包囲は解くことにします」
「えっ……?」
アルフォンスがカインを見上げる。
驚きが表情に表れていた。
激高しての言葉とはいえ、自分の要求がかなり無茶なものだということは分かっていたのだ。
「ただし、条件が──」
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