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【第一章 夜に秘める】月が見た凌辱(11)
だから、王の続く言葉に身構える様子をみせる。
黄金の髪に絡んでいた指が徐々に腰へと這い降りてきた。
「僕に夢をみさせてください。ずっと想い続けてきたあなたを今宵ひと夜、この腕に……」
「あっ……」
強く抱きすくめられ、思わずアルフォンスは呻き声を漏らした。
だが、王の腕は容赦ない。
身じろぎすら許されず、鞭のように拘束する。
胸当てを外され、軍装を解かれた。
「ディオ、何とかしろ……っ」
背後にいるはずの兄貴分はなぜ動かないのか。
何としても王都の包囲を解かせねばならない。
交渉のためには簒奪王に媚びを売る必要があるというアルフォンスの言葉を忠実に守っているのだろうか。
だが、こんな事態は想定外だ。
「ディオ……っ、たす……」
上ずった声は、しかしカイン王の無慈悲な言葉に遮られる。
「よくやった、ディオール。ややこしい地形だったが、おまえの寄越した地図のおかげで行軍できた。そのうえ、アルフォンス殿下をお連れするとは」
「……はっ」
背後で空気が動いたのは、ディオールが頭を垂れたからだろうか。
──どういう意味だ?
簒奪王の腕の中で硬直するアルフォンス。
一瞬、呆けたのは理解が追いつかなかったせいだ。
やがて、震える身体。
「……裏切ったか、ディオ」
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