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【第一章 夜に秘める】月が見た凌辱(13)
「こんな方法ですみません。ただ……あなたが欲しいんだ」
王の肩越しに広がる夜空の黒よ。
はだけられた胸元に冷気が張りつく。
伸ばされた手をつかんで、アルフォンスはその熱に身を震わせた。
一瞬、力が抜けた隙をつくようにカインの熱い手の平が首筋に触れ、胸元をまさぐる。
寒さのせいだろう。
ツンと勃つ薄桃色の乳首を擦られ、たちまちアルフォンスの双眸が涙で潤んだ。
「何でこんなことを……。俺がお前に何かしたか?」
「あなたに罪なんてない!」
カインが声を荒げたのは、この事態に彼も昂っているからだろうか。
「すべて僕の欲です。難路を行軍してここまで軍を進めたのは、レティシアの黄金──ひと目でいい。あなたの姿をもう一度見たかったから。王弟のあなたが、よもや自ら使者として来てくださるとまでは思っていなかった」
アルフォンスの目尻に溜まった涙を、カインは愛おしそうにすすった。
「ひと目見られれば良かったのに。そうしたら一言でいい、声を聞きたくなった。声を聴けば会話を交わしたくなり……この腕に抱きしめたくなった」
囁く熱い吐息が首筋をくすぐる。
身体の奥がゾワリと痺れる感覚に、アルフォンスは戸惑った。
「抱きしめたら、もう放したくなくなって……僕のものにしたくなった」
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