21 / 180

【第一章 夜に秘める】月が見た凌辱(13)

「こんな方法ですみません。ただ……あなたが欲しいんだ」  王の肩越しに広がる夜空の黒よ。  はだけられた胸元に冷気が張りつく。  伸ばされた手をつかんで、アルフォンスはその熱に身を震わせた。  一瞬、力が抜けた隙をつくようにカインの熱い手の平が首筋に触れ、胸元をまさぐる。  寒さのせいだろう。  ツンと勃つ薄桃色の乳首を擦られ、たちまちアルフォンスの双眸が涙で潤んだ。 「何でこんなことを……。俺がお前に何かしたか?」 「あなたに罪なんてない!」  カインが声を荒げたのは、この事態に彼も昂っているからだろうか。 「すべて僕の欲です。難路を行軍してここまで軍を進めたのは、レティシアの黄金──ひと目でいい。あなたの姿をもう一度見たかったから。王弟のあなたが、よもや自ら使者として来てくださるとまでは思っていなかった」  アルフォンスの目尻に溜まった涙を、カインは愛おしそうにすすった。 「ひと目見られれば良かったのに。そうしたら一言でいい、声を聞きたくなった。声を聴けば会話を交わしたくなり……この腕に抱きしめたくなった」  囁く熱い吐息が首筋をくすぐる。  身体の奥がゾワリと痺れる感覚に、アルフォンスは戸惑った。 「抱きしめたら、もう放したくなくなって……僕のものにしたくなった」

ともだちにシェアしよう!