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【第一章 夜に秘める】月が見た凌辱(15)

 耳朶を甘く噛んでの囁きに、アルフォンスの額に朱が差す。 「そんなわけあるか。放せっ!」  力を失った手が懸命に拳を作り、黒衣に包まれた胸元を叩いた。  抵抗を可愛く感じたのか、黒曜石の眼が細められる。  簒奪王の右手が動き、自身の黒衣の足元をくつろげた。 「おい、嘘だろ……」  黄金が震える。アルフォンスの潤んだ視線は、王の股に釘付けになっていた。  血管が波打ち屹立したものが、今しもアルフォンスに圧しかかろうとしている。  剥き出しの膝の裏に手を差しこまれ、ゆっくりと開かされた。 「やめ……」  怒りと驚愕に燃えていたアルフォンスの表情に、初めて恐怖の色が浮かぶ。 「少しだけ我慢して。僕を受け入れて」 「や……ぁっ……」  簒奪王の腰がゆっくりと沈んだ。  誰も触れたことのない身体の内側を強引に拓かされる。  小刻みに加えられる振動。 「んあぁ……っ……」  震える唇から言葉にならない声が漏れる。  間近に迫る黒曜石。  額に、瞼に、頬に、唇に。  何度もくちづけを落とされ、アルフォンスの双眸がトロリと歪む。  ──ああ、せめて痛かったらよかったのに。  腹を貫く圧迫感は苦痛だが、身体の内側をぬるぬるしたもので弄われるたびに首筋が蕩けそうになる。  アルフォンスと、耳元で名を囁かれるたびに己の意志とは関係なく彼の身体はビクリと跳ねた。  黒衣の肩越しに迫る夜空。  凌辱を、銀色の月がじっと見つめていた。

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