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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(7)

「すまない、アル」  拳じゃなかっただけ感謝しろと吐き捨て、ディオールの胸を押しのけるアルフォンス。  だが、大柄な身体はピクリとも動かなかった。  アルフォンスが水に濡れる肢体を隠しもしなかったのは兄弟同然に育ってきたゆえ今更との思いもあろうが、お前ごときに身体を見られても恥とも思わぬと示すためでもあろう。 「……すまない、アル」  もはや口癖のようになったその言葉を吐きながら、腰に添える手がそろりと動いた。  アルフォンスの唇から短い音が漏れた。  それは声にならない悲鳴だったろうか。 「少しだけ我慢していろ、アル」  太い指が、腫れあがった後孔をゆっくりと押し広げる。  ──つぷり。  挿入に、微かな呻き声。  第一関節。  そして第二関節まで押し挿った指が内部で上下に動く。 「ころ……してや……」  罵声は涙に震えていた。  バスタブに立ったまま執拗に指でかき回され、たまらずアルフォンスの腰が痙攣したと同時に、はしたない音をたてて熱い汁が腹の中でうねる。

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