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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(8)
「んっ……ううっ」
抜かれた指にまといつくように、精液が飛び散った。
股の間を先ほどと同じ感触が、今度は大量に流れ落ちる。
「その……男のものを中にそのままにしていると腹を下すと聞いたことがあって」
つまり、簒奪王の精液を掻き出してやっただと?
とんだ忠臣だ。
すまなさそうな表情が白々しいものに見えて、今度こそアルフォンスの拳が固められる。
「アル、大丈夫か……ぐっ」
顎にまともに打擲を喰らい後方に倒れ込んだのは、あるいはわざとだろうか。
この男、これで罰を受けた気にでもなっているのか?
衝立を支えによろよろと立ち上がる元部下に、アルフォンスは冷たい一瞥をくれてからバスタブを出た。
用意されていた柔らかなタオルからは案の定甘い香りが漂い、それがまた腹立たしい。
「ア、アル、信じてくれ。あんたを守りたい、その思いは本当なんだ」
もはや悪態すら返ってこないことに、ディオールが大きく顔を歪める。
「私はあんたのためなら死ねる」
本当だ、という言葉は夜明けの空に空しく吸い込まれた。
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