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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(16)

「何でオレっ……」  直情的な脅しに、ロイ将軍が声をあげる。  剣を手にしたアルフォンスは、勝ち誇った軍神のようにツンと顎をあげた。 「似合いもしないヒゲを生やして間抜けな童顔を隠しているんだろう。侍従の少年に見えるぞ。下手な誤魔化し方が気に喰わん」  あまりと言えばあまりな理由に、ロイの目元が赤く染まった。  たしかに、良く見ればツルリとした皮膚、丸い輪郭。  もし髭がなかったら将軍としての対面は保てまい。 「それに、軍人のくせにあっさりと俺に剣を奪われた。俺は無能な奴は嫌いでな」 「い、言わせておけば……」  激しやすい性格なのだろう。  今度は屈辱で顔の色を失っている。 「陛下、見ていないで何とかしてください!」  名高い《レティシアの黄金の剣》には到底敵わないと悟ったのだろう。  ロイが声を張り上げる。  衝立に背を凭せ腕組みしていた黒衣の王は微かに眉を動かした。  笑ったのだろうか。

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