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【第一章 夜に秘める】「剣を忘れるな」(20)
これを水分補給と呼べるのだろうか。
何度もくちづけを交わすうちにアルフォンスとの瞼がじわりと熱く、重くなる。
身体が言うことを聞かなかった。
当然と言えば当然だ。
近ごろはろくに眠っていない。
それどころかグロムアス軍と対峙する間、戦装束を解く暇もなかったのだ。
「交戦国の使者としてアルフォンス殿下、あなたが来た。ただ停戦交渉をして別れたら、きっとそれきりでしょう。一生、会うことはない。あなたがどこかで他の誰かと笑い合う未来を想像したら……たまらなくなった」
薄れゆく意識の中、深い声が耳朶をくすぐる。
「どんなに憎まれても構いません。でもあなたを傷つけたくなんてない。僕は自分の思いが止められない」
答えるようにアルフォンスの唇が震える。
だが言葉を紡ぐよりまえに双眸は閉じられ、身体は深い眠りへと落ちていった。
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