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【第一章 夜に秘める】屈辱のくちづけ(7)

 黒塗りの剣とは月光に反射することのないよう煤で黒く塗られた刃のことで、暗殺に使われるものである。  すなわち暗殺者の代名詞となっている言葉だ。 「それとも、ここからレティシア王都に向けて火矢を放ちましょうか。今日は特に良い風だ」  アルフォンスが奥歯を噛みしめる音が、カインの耳にも届いたのだろう。 「僕が欲しいものはただひとつです」 「何でそこまでして俺を……」  跪き頭を垂れた今の姿が、まるで屈服を表しているようで、アルフォンスは立ち上がった。  ツンと顎をあげる。 「……分かった。一緒に行ってやる。そのかわり姉には……いや、レティシアには手を出すな。今後一切だ」  頷くカイン。 「あなたの弱みは分かったが……僕は嫉妬で狂いそうですよ」  何を言ってるか分からんなと、アルフォンスはそっけない態度を装った。

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