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【第一章 夜に秘める】屈辱のくちづけ(14)

 大きな手のひらが湿り気を帯びているように感じるのは、あるいはアルフォンスの身体が快楽への期待に汗ばんでいるせいだろうか。 「名前を呼んでください。カインと」 「いやだ、呼ばない……っ」  するすると両手が腰へ降りる。  細いくびれを愛撫してから、手のひらで包むように尻を持ち上げた。  くちゅ……。  左の人差し指が後孔に挿し込まれる。 「うっ」  第一関節ほどで動きが止まったことに、アルフォンスの双眸が揺らいだとき。  ぐちゅり。  もう片方の手の指も侵入してくる。  入口を撫でるように、こまかく突くように振動を加えられ、たまらず漏れたのは呻き声か吐息か。  噛みしめた唇がだらしなく開いた。  わざとはしたない音を立てるように奥を探る指先が、不意に抜かれる。 「あんっ……」  思わず声が漏れた。  高慢なプライドをあざ笑うように、物足りないとねだりひくつく後孔。  探るような動きで再び押し当てられたのは、カインの屹立だった。黒衣の足元だけをくつろげた簒奪王は、アルフォンスの尻を支える両手をゆっくりと下ろした。 「あぁ……っ、なんでこんなこと……」  硬い物が押し込まれ、アルフォンスは全身を強張らせる。 「何故って? アルフォンス、あなたを愛しているからですよ」  黄金色の髪を掻き抱きながら、囁く言葉はどこまでも甘い。

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