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【第一章 夜に秘める】屈辱のくちづけ(18)
※
いつのまにか馬車の揺れは小さくなっていた。
窓の隙間から零れ入るのは雨上がりの森の匂いか。
至近距離の黒曜石の眼に映るのは、快楽にとろけた己の表情。
とろりと視線をさまよわせ、唇を震わせる。
指先はまだ黒衣を握りしめていた。
欲望を何度も吐き出された後孔はひくつき、白濁液をはしたなく零す。
目を閉じたのは簒奪王の顔がゆっくりと近付いてきたからだ。
角度を変えて何度も唇を重ねながら、カインが空虚な「愛」を語る。
あなたをずっと愛している──そんな言葉をどうして信じることができようか。
何も考えられない。
アルフォンスは、深い声の海にただ溺れていた。
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