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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】絢爛たる都(2)
攻撃する素振りすら見せず宿営地からレティシア王都を眺めるカインの表情は熱に浮かされたように見えたものだ。
そこに現れたのがあの男──アルフォンスといったか。
レティシアの王弟である。
カイン王は彼の虜になったかのように猫なで声で機嫌をとったかと思えば、ロイら臣の前ではしたない劣情を爆発させたのだ。
たしかにアルフォンス殿下は凛々しくも美しい方だ。
それはロイも納得する。
輝く黄金の髪に凛とした翡翠色の双眸。
ツンと顎をあげた高慢な表情がああも似合う男性はそうはいないだろう。
《レティシアの黄金の剣》とはよくいったものだ。
いや、それよりも──ロイは呟いた。
「アルフォンスか。細いが鍛えた身体をしていやがった。手の平を見れば分かる。剣の腕も確かだろうな」
「それはどうも」
それは独り言である。
敵国の王弟に対する個人的な感想だ。
だから背後からの突然の声に、ロイは文字どおり飛びあがったのだ。
同時に首筋にチクリ。
刺激を感じる。
「おっと、動くな。頸動脈にフォークが刺さったみっともない死体になりたくなかったらな」
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