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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】絢爛たる都(3)
振り返りかけ、慌てて動きを止めたロイはフワリと鼻孔をくすぐる甘い香りに背後の人物の正体を知った。
高価なシャボンは王御用達のものだ。視界の端で黄金色が瞬く。
王宮の庭で立ち尽くすロイの首筋にフォークを突き立てているのはアルフォンスであった。
「アルフォンスさーん、どこにいらしたのですか?」
遠くから呼ぶ声を気にしながら、物陰へとロイを引きずっていく。
食卓からくすねてきたのだろう。
小さなフォークといえど《レティシアの黄金の剣》が持つと短刀に見える、なんてのんきなことを考えている間にアルフォンスを探す声は遠ざかっていった。
「世話係兼見張りってやつだな。やっと撒いてきたんだ。死にたくなければ俺をここから逃がせ」
「な、何でオレが?」
叫びながらロイ。
はて、コイツに刃物を突き付けられるのは二回目じゃねぇか? なんて考えている。
「部屋を抜け出したところで、お前が間抜け面晒してフラフラしてるのが見えたからだ。むさ苦しいヒゲを剃ったんだな。どこの子どもかと思ったら、王にこき使われている名ばかりの将軍じゃないか」
図星をさされ、ロイ将軍はグッと声を詰まらせた。
数日一緒にいただけで、もう自分の立ち位置を把握していやがる。
恐るべし《レティシアの黄金の剣》……なんて。
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