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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】絢爛たる都(5)
近年流行している装飾的な建築様式を取り入れた王宮は、しかし敷地でいえばそれほど広いものではなかった。
政務を司る広間や王の私的空間、さらには諸侯に割り当てられた私室を備えた三階建ての建物だ。
その周囲には申し訳程度の広さの庭が造られている。
手入れの行き届いた庭園を抜けると、王宮の裏手に出た。
「人の気配がないな」
ロイにつれられ小走りに駆けながらアルフォンスが辺りを見渡す。
「ああ、祭が近いからな。みんな用意に明け暮れてるんだ。オレの妹もウキウキな感じで準備してるぜ。正直、遠征が思いのほか早く終わってオレもホッとしてる」
祭の日にやりたいことがあったからなと付け足したロイは、そこで初めてアルフォンスの手を握ったままであることに気付いたのだろう。
ヒッと大袈裟に悲鳴をあげて振り払った。
「へ、陛下に見られたらオレの首が飛ぶ……文字どおり」
キョロキョロと落ち着きなく周囲に視線を送る将軍に、アルフォンスは呆れ顔だ。
「こんなことでいちいち首が飛ぶわけないだろうが」
「いや、陛下の貴様に対する執着は傍で見ていて恐ろしいほどだ。あんな人じゃなかったのに……」
「で? ここからどうやって出るんだ?」
やはり戻ろう、なんて言いだされては敵わない。
挙動不審気味なロイに、アルフォンスは再びフォークをちらつかせる。
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