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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】絢爛たる都(7)

「うわ……っ」  城壁に空いたトンネルをくぐり抜けた途端、景色が開けた。  自分の立場も状況も忘れ、アルフォンスが感嘆の声をあげたのも無理はない。  街は光に満ち溢れていた。  二階建ての色とりどりの建物の間を縫うように無数の水路が走っている。  木々の緑が陽光を受け、水面はきらきらと輝いていた。  細い運河には小船に乗った人々の声が四方から飛び交っている。  水路が主要な交通手段のひとつなのだろう。  先へ急ぐ船もあれば、果実を売る商売船も見て取れた。 「ここは海抜が低いからな。治水対策で運河がいっぱいあるんだ」  どうだ、きれいな街だろうとロイは得意げだ。  童顔も相まって街の賑わいに興奮している子どものようにも見える。  レティシア領内から馬車で数日移動しただけなのに、まるで季節が変わってしまったかのようだ。  陽射しは明るく、そこかしこに花が咲き蝶が舞っている。 「この水路を下れば市壁の外へ出られる。もっとも門があって兵士が昼夜を問わず見張りに立ってるんだがな。おい、貴様?」  ロイの訝し気な声に我に返り、慌てて口元を引き締めた。  ひょっとしたらあんぐりと口を開けていたかもしれない。 「き、貴様とは何だ」 「いや、殿下って呼ぼうと思ったけど、らしくねぇなって思って」 「どういう意味だ」  小さな笑い声が水面に軽やかに落ちる。

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