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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】絢爛たる都(8)
王子として育ち今は王弟として軍を率いる立場であるが、しょせん自分は田舎者にすぎないのだと、絢爛たる都を前に臆した心が少し和らぐ。
「まぁ……貴様呼びでも構わん。俺たちに主従関係はないからな」
ロイの馴れ馴れしさはいっそ心地よかった。
王弟とはいえ一年の大半を軍で過ごすアルフォンスにとっては、カインの馬鹿丁寧な言葉遣いよりむしろ馴染み深い。
「妹がいるのか?」
「えっ?」
さきほどから言葉の端々で妹の存在をアピールしてきたロイだが、世間話といったアルフォンスの言葉に嬉しそうに顔をほころばせた。
「まぁな。可愛い奴で……いや、決して可愛くはないんだ。憎たらしいことばっかり言いやがる」
「ふぅん」
つまり可愛くてたまらないのだろうとアルフォンスは苦笑する。
敵国の将軍の弱みを握ったとは、不思議と思わなかった。
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