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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】約束はきっと儚い(2)
彼がうたたねをしている隙に、アルフォンスは何度も部屋を抜け出していた。
ロイから良いことを聞いたとばかりに水路に入り浸ることができるのは、このフリードが昼寝を欠かさないおかげでもある。
「しかしあの船というやつは水に浮かんでいるせいか、いらぬ方向に力が加わっている気がするな」
「はて、そうですか? 機能的な形だと思うんですけど?」
「水の影響を受けて縦横に動いて節操がない。しかも小刻みにだ。あれは乗り手への攻撃の意志か?」
キョトンとした表情のフリード。
感覚を思い出したか、アルフォンスは己の胸を押さえた。
「船が揺れると、喉がキユッと締まって胃が膨張しそうになる」
「アルフォンスさん……?」
真顔のフリード。
声が低い。
「難しく仰いますけど、それは船酔いというやつですよ」
「ふなよい?」
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