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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】約束はきっと儚い(6)
いつのまに入って来たのか、グロムアス首都に来てから初めて会うカイン王である。
動揺を悟られまいと、アルフォンスはコホンと咳払いをした。
「こ、声に出ていたか。そんな筈はないんだが」
「しっかり声に出ていましたよ。それにご自分では気付いていないでしょうけど、あなたは意外と考えていことが顔に出るタイプのようだ」
反射的に顔を俯けるアルフォンス。
その細い顎が、王の指に捉えられる。
くいと上を向かされ、尚も往生際悪くアルフォンスは視線を泳がせていた。
黒曜石の熱い視線とぶつかると、我知らず唇がひらく。
カインの顔がゆっくりと近付いた。
「坊ちゃんの大事なひとは結構な暴れん坊で困りますよ」
しかし、そこでフリードの無粋な一言が邪魔をする。
顎の戒めが解かれた。
そのようですねと、カインが苦笑を返す。
「アルフォンス殿下が脱走されても僕を呼べばいいんですよ。あなたはこの部屋にいてください」
ハイハイと面倒くさそうに頷くフリード。
カインはアルフォンスに向き直った。
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