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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】約束はきっと儚い(9)

「刺客に襲われました。よくあることですよ。最近はとくに多いか」 「よくあるって……」  ふたりのやりとりに悲鳴のような声をあげ、フリードが救急箱を抱えて駆け寄ってくる。 「供もつけずに動くからっ」 「すみません……」  手当てを彼に任せ、カインは側の椅子に腰かけた。 「ここに来るときくらい、一人でいたいんです」 「そんなこと言ってる場合じゃないですよ。まさか城内で襲われるなんて……」  包帯を取り出して、フリードはカインの手をとった。  安心した様子で傷口を任せるカインは見たことのない砕けた表情をしている。  召使い相手にも敬語で喋るなんて変わった王だと考えることでアルフォンスは気を紛らわせた。 「元から暗殺の動きはありましたが、最近とくに顕著かもしれませんね」 「お気を付けなさい。万一のことがあっては……」 「肝に銘じます。まだ王としての役目を果たしていませんから」  クルクルと勢いよく巻かれていく包帯。  物々しい会話のわりにフリードの手さばきはあやふやで、後ろから覗きこんでいたアルフォンスは「むぅ」と唸った。  駄目だ。  苛々する、この手つき。

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