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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】約束はきっと儚い(10)
「貸せ、俺にやらせろ」
フリードを押しのけると、ブヨブヨに巻かれた包帯を一度外した。
救急箱の中から消毒液を取り出す。
カインの手をとって液を遠慮なくかけると、沁みたのだろう。
カインの手に一瞬、力が入った。
「…………っ」
「痛むか?」
「……あなたに手当てをしてもらえるなんて、傷より心の方が痛いです」
「ふざけたことを……」
消毒液が床に垂れるのも構わず、さらにもう一掛け。
さすがのカインも呻き声をあげた。
「じくじくした妙な痛みはないな?」
頷くカインに、アルフォンスはほっと息をつく。
「傷口も熱を持っていない。化膿はしていないようだな」
かすり傷ですよと笑うカインの手に、今度は嫌がらせのつもりで消毒液をかけてから、アルフォンスは手際よく新しい包帯を巻き始めた。
「刺客の奴も甘いな。俺なら刃物に毒を塗っておく」
包帯の端を結んでから、アルフォンスはカインの手を叩く。
「このくらい自分で手当てしろ。元軍人だろう」
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