101 / 180

【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】刺さる棘(5)

「私は今や王の弟。あんたと対等だ」 「何言ってるんだ、お前……」  強引に身を寄せたせいだ。  あとずさるアルフォンスの足が絡み、二人は地面に倒れ込んだ。  咄嗟にアルフォンスの頭をかばって抱きかかえたため、ディオールは人工池の縁に思い切り肩をぶつけてしまう。 「うっ……!」  呻いた瞬間《レティシアの黄金の剣》が身を翻す。  脛を蹴られ、身体を仰向けに倒された。  次いで喉元に掌底を打ちこまれる。 「ぐっ……がはっ……」  肺が詰まり、ディオールは大きな身体をくの字に曲げてのたうち回った。 「もう一度言ってみろ、ディオール」  固められた拳を呆然と眺め、ディオールはいつものように「すまない」と呟く。 「す、すまなかった。どうかしていた。俺はあんたを守りたかっただけなんだ……」 「ならば!」  アルフォンスの怒声。  戦場でもよく通るその声に、身に沁みついた忠誠心か。  ディオールの体から力が抜けた。

ともだちにシェアしよう!