103 / 180

【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】刺さる棘(7)

 アルのためなら何でもしてやりたい。  でも──。 「あ、兄に知られては……。それに私は忙しい……」 「あてもなくこんな所をうろついてるんだ。どうせ暇なんだろう」  図星をさされ、ディオールは反射的に頷く。 「そ、それはそうだが。でも……」 「ふぅ……」  溜め息は、苛立ちを表していた。 「それともディオール。見返りが欲しいのか?」  初めそれがどういう意味か分からずディオールはぼんやりとかつての主人を見下ろす。  半眼を閉じた強い視線が蔑むように己を射抜く様が心地良い。 「俺を抱きたいんだろ」  そう言うなり、アルフォンスはシャツの喉元のボタンを外し始めた。 「アル……?」

ともだちにシェアしよう!