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【第ニ章 溺れればよかった、その愛に】刺さる棘(7)
アルのためなら何でもしてやりたい。
でも──。
「あ、兄に知られては……。それに私は忙しい……」
「あてもなくこんな所をうろついてるんだ。どうせ暇なんだろう」
図星をさされ、ディオールは反射的に頷く。
「そ、それはそうだが。でも……」
「ふぅ……」
溜め息は、苛立ちを表していた。
「それともディオール。見返りが欲しいのか?」
初めそれがどういう意味か分からずディオールはぼんやりとかつての主人を見下ろす。
半眼を閉じた強い視線が蔑むように己を射抜く様が心地良い。
「俺を抱きたいんだろ」
そう言うなり、アルフォンスはシャツの喉元のボタンを外し始めた。
「アル……?」
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