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【第三章 憎しみと剣戟と】欲望を呑みこんで(4)
この部屋から外に出るなと坊ちゃんからきつく言われているのですが、なに構うものですか。
少しの間だけです──早口でまくしたてると、嵐のように部屋を出て行った。
その後姿を見送りながらため息をついたところで、フリードが大慌てで戻ってくる。
「ダメです、ダメです。向こうからロイ将軍が来ます。城の人と顔を合わせるのはマズイですから」
ちょっと失礼を──なんて言って戸棚の中に隠れてしまった。
アルフォンスは立ち尽くしたまま。
「そ、騒々しい……」
感傷にひたる間すらない。
どんな付き合いか知らないが、こんなに落ち着きのない従者ならカインとて臣の前に出したくないのも頷けよう。
王の威厳が崩れ去る。
果たして。フリードの予告どおり将軍ロイがやってきた。
こちらはちゃんと扉をノックする。
育ちのよさに幾分ホッとしながらもアルフォンスが訝しむ表情を作ったのは、ロイが一人ではなかったからだ。
体格の良い男たちを十数名引きつれている。
これはもう一部隊と称しても違和感のない規模だ。
腰に帯びた剣も儀礼用のそれではなく、明らかに実戦を意識した造りのものだ。
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