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【第三章 憎しみと剣戟と】欲望を呑みこんで(8)

 ならば今、不用意に敵対するべきではない。  だが──。  アルフォンスはロイの剣を拾い上げる。 「薄汚れた暗殺者の剣だ」  触れたくもないという風を装って、彼の足元に放り捨てる。  決別の印に、ロイが唇を噛んだそのとき。  配下がざわついた。  向こうから兵士が一人駆けてきたのだ。 「閣下、正体不明の武装勢力が水路を伝って街に侵入しました」 「どういうことだ。王の勢力か? 軍は完全にこっちで掌握しているはずなのに」  分かりませんと首を振る兵士。 「クソッ、情報を集めろ」  こうしてはいられないと、ロイは足元の剣を拾う。  アルフォンスにちらりと未練がましい視線を送った後、身を翻した。  配下を引き連れ、走り去っていく。 「正体不明の武装勢力だと。まさか……」  アルフォンスの脳裏に芽生えたのは微かな希望か。  それとも大いなる絶望であったろうか。      ※  ※  ※

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