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【第三章 憎しみと剣戟と】欲望を呑みこんで(11)
仰ぎ見た先。
黒曜石の眼がアルフォンスを見下ろしている。
──無事だったんだな。とっくに王宮から逃げたものと思っていた。
──怪我はどうなんだ。俺を庇ったせいであんなにひどい傷を……。
──ロイが狙っている。正体不明の武装勢力も街に侵入したらしい。
「カイン?」
矢継ぎ早な問いかけに、しかしカインは答えない。
黒曜石から表情を読み取ることは困難だ。
「あっ……」
不意に抱きすくめられ、アルフォンスは硬直した。
乱暴な手つき。
これは抱擁ではなく、拘束だ。
蔦に覆われたベンチに押し倒され、背中の痛みに顔をしかめる。
「カイン、何を……?」
無言の黒衣が覆いかぶさった。
「カイ……? 何考えて……やめろ」
白い拳が黒衣の肩を叩く。
だが、抵抗は空しい。
慣れた手つきで下腹部をまさぐると、下帯を剥ぎ取られた。
──犯される?
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