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【第三章 憎しみと剣戟と】欲望を呑みこんで(13)

「うぅ……っ」  呻き声に嗚咽が混ざる。  アルフォンスの身体から力が抜けた。乱暴な抽挿にただ身をゆだねる。  ──なんて馬鹿な勘違いをしたんだろう。  ──こんな行為、愛なんかじゃないのに。  その証拠に、カインはアルフォンスに対してただの一度も肌を晒さなかったではないか。  今だってそう。  カインは足元を寛げているだけだ。  アルフォンスの服ですら下半身を覆う布を取り除いただけである。  それは完全に性交のためだけの体勢に思えた。  それでも黒衣の首元から覗く傷痕を見ると、何も言えなくなってしまうのだ。 「……お、思い出したんだ、あのときのこと。俺が憎いから、だからこんなことするんだろ」 「………………」  返事はない。  翡翠色の双眸からこぼれる涙は痛みゆえか? 「頼むから……カイン、何か言ってくれ……っ」

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