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【第三章 憎しみと剣戟と】欲望を呑みこんで(15)

「ち、違う。心配で探していて……そうしたらたまたま」  明らかに狼狽えた様子でしきりに言い訳を繰り返すのはディオールであった。  目が泳いでいる。  かつての主人と兄の顔、そしてふたりが繋がっているところに視線を走らせ、慌てて余所を向く。 「ディオ、お前……いつから?」  言い得ぬ屈辱に声が震えた。  構わず繰り返される抽出に視界が陰る。 「心配で探していた? 僕をか? それともこのひとを? ディオール、おまえの献身は薄気味悪いほどだな」  カインの声は冷たい。  この期に及んで尚も名を呼ばれないことに、アルフォンスは絶望した。 「度胸がないなら、そこで見ていろ」  一際奥へ挿し込まれ、アルフォンスの泣き濡れた頬が花びらの色に染まる。  最奥で異物がブルリと震えた。  無慈悲な王は、くちづけも交わさず黄金の花を抱き潰す。 「んん……っ」  やがて押さえつけられていた腕が緩み、黒衣がゆっくりと身を起こす。  表情はひとつも変わらない。  だが、さすがに深く息をついたときだ。  拳が王の頬を穿った。  カインがまともに喰らったのは贖罪の思いではなく、ただの油断だろう。  口の端から血を吹き地面に倒れる黒い姿を見下ろすのはアルフォンスである。  きつく唇を噛みしめ、翡翠の双眸を燃え上がらせて。  乱暴な手つきで服装を整えるとその場に立ち上がった。  カクリと腰が折れ、ふらつく身体を支えたのはディオールの手だ。  よろり……体勢を整えると、アルフォンスはその手をも払いのけた。  倒れ伏す《簒奪王》に一瞥をくれると、無言でその場を後にする。  カインの精液を大量に呑んだ後孔は、今もはしたなくひくついていた。

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