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【第三章 憎しみと剣戟と】花の向こうで眠れ(2)
しかしこの場合、弟とはいえ決して味方とはいえない。
「兄上、アルの気持ちを知っているのだろう。なのに、何故あのようなことを……!」
そういえばこいつはアルフォンスの忠犬だったっけ。
とうに飼い主に捨てられたというのに、懸命に忠義の尻尾を振っているのか。
「……これでいいんだ」
出来の悪い弟にというより、己に言い聞かせるようにカインは呟いた。
「あのひとがほんの少し……僕に想いを寄せてくれているのは分かってた。でも……だからこそ、これでいい。僕への情なんて残さなくていい」
「それはどういう意味だ」
怒りと困惑を隠せず呆然と立ち尽くす弟。
今この瞬間にも、アルフォンスを追って駆けていきたいのだろう。
──そうすればいいのに。
敵地の真ん中で王の庇護のない彼を守れるのは、この男しかいないというのに。
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