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【第三章 憎しみと剣戟と】花の向こうで眠れ(4)

「こんなところにいらっしゃったか、陛下」  数十人の兵士が二人を取り囲んだ。  軍の支給品である長剣の切っ先は、今や忠誠の対象であるはずの王を指している。 「陛下、先王殺害容疑で逮捕します」  一歩前に進み出たのは、カインが信頼をおく将ロイであった。 「裏切ったな、ロイ将軍」  静かな恫喝に、ロイは童顔を紅潮させる。 「先に裏切ったのは陛下……いや、簒奪王カイン、貴様だ!」  部下の前であるにもかかわらず、ロイは声を震わせる。 「昨年のクーデター……オレにも言ってくれたら良かったんだ。先王の軍拡路線にはオレも疑問を抱いていた。先王にはご退位いただいて、しかるべき人物に玉座についていただこうとオレだって計画していたんだ」  軍の中にだってこんなに賛同者がいた──引きつれる部下の数を、ロイは誇っているようだ。  対するカインのそばには弟が一人いるだけ。  これが軍の支持を失うということなのだ。

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