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【第三章 憎しみと剣戟と】花の向こうで眠れ(15)
「なに? おなか、すいてるの?」
間の抜けた言葉とともにポケットをさぐる。
しかしそこに食べものはなかったようで、少年の指に絡んで出てきたのは金色の鎖だ。
子供向けのおもちゃの装飾品で、花の飾りがついている。
「姉うえへのおくりものなんだけど……」
少し迷う素振りを見せたのち、少年はカインの首に金色をかけてくれた。
「やっぱり、黒色によくにあうよ」
こんなのもらえないと首を振る。
すると少々気が短いのだろうか、少年はムスッと頬を膨らませた。
「ね、いっしょに行こう」
差し出された手を、夢見心地でとる。
あたたかな指先に触れた瞬間、失われた希望がこの身にあふれだした。
「もう一度キスしていい?」
「きす? なに?」
弾ける笑顔で頷いてから、少年はアルフォンスと名乗った。
「僕の名はカイ……」
しかし、芽生えた希望はいつでも打ち据えられる運命にある。
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